持続可能な原材料調達
セミナー「資源開発と先住民族、そしてCSR」開催報告
国際的な資源の争奪競争が激化しています。日本国内の経済活動に投入される天然資源等19億4,400万tのうち、8億700万tが輸入されており(平成19年版環境循環型社会白書)、うちエネルギー・金属資源はほぼすべてを輸入に頼っています。一方で、資源の開発現場では私たちの思いもよらない環境社会問題が生じています。その影響は現地の人びと、とりわけ土地や自然にその生活や文化が深く根ざしている先住民族の人々に大きな影響を与えているのです。地球・人間環境フォーラムは、2007年10月5日「資源開発と先住民族、そしてCSR」と題するセミナーを開催しました。以下その概要を報告します。
■
資源開発と先住民族の権利 (谷口正次さん/資源・環境ジャーナリスト、国連ゼロエミッションフォーラム理事) |
セミナーでは、まず国連ゼロエミッションフォーラム理事の谷口正次さんが、世界中の資源の開発現場と環境破壊、人権問題について概観し、現在の獲得競争に警鐘を鳴らした。
谷口さんはまず、今年9月に開催された国連総会で採択された「先住民族権利宣言」についてふれ、「これは世界の人口の5.6%(3.7億人)を占める先住民族の自由・平等・固有文化・伝統・言語を維持する権利先住民族の権利を保護しようというものだ」と評価した。同宣言は、先住民族の自決権・自治権・伝統的に占有してきた土地、資源の所有権を認め、強制移住、土地収用、強制同化を防ぐ措置を各国政府に求めるものでもある。ただし、宣言に法的拘束力は伴わない。
[続きを読む]
[配布資料のダウンロード]
■ ニューカレドニア・ゴロニッケル:開発との闘い (ラファエル・マプーさん/レブ・ヌー代表) |
続いて、先住民族団体レブ・ヌーの代表であるラファエル・マプーさんが、ニューカレドニア・ゴロニッケル開発事業と先住民族の反対運動について報告した。
マプーさんは、ニューカレドニア南部のヤテ村ウニア部族出身で、2002年初めにはニューカレドニア政府の先住民省大臣も務めた。現在は先住民族の権利、自然環境を守るために結成したNGOレブ・ヌーの代表(「レブ・ヌー」とは、大地の目、故郷の目の意)。
ニューカレドニアの人口は24万人、そのうち10万6,000人が先住民族のカナックである。漁業、農業を営み、3000年以上前からこの地に住んでいる。経済の中心はニッケル、観光、水産業。鉱山開発が開始されたのは1850年代に遡る。
[続きを読む]
[配布資料のダウンロード]
■ 意味のある協議と合意 (満田夏花/地球人間環境フォーラム) |
続いて、地球・人間環境フォーラムの満田夏花が、先住民族の権利をめぐり常に問題となる「意味のある協議と合意」に関する報告を行った。先住民族の生活に影響を与える開発行為の際、「自由意志にもとづく、事前の、情報を十分提供された上での合意(Free, Prior, Informed Consent ;FPIC)」は国際法上確立された概念になっているが、現実には無視されてしまうことも多い。世界銀行等の国際金融機関は、よりハードルの低い「自由意志にもとづく、事前の、情報を十分提供された上での協議」を打ち出しているが、これすら形骸化した協議で終わっている例も多数ある。
[続きを読む]
[配布資料のダウンロード]
■ 先住民族の権利と企業:CSRの視点から (足立 直樹さん/株式会社レスポンスアビリティ代表取締役) |
最後に、株式会社レスポンスアビリティの足立直樹さんが、先住民族についての説明と、先住民族の権利と企業の関係について講演した。
足立さんは、まず、「先住民族」の定義や各地の先住民族が共通して直面している、歴史的(植民地化)、物理的(開発、奴隷労働)、文化的(同化、アイデンティティ)な緒問題を解説した。その具体例として、限界以下の貧困にあえぐインドの部落民、失業率が全国の5倍も高いオーストラリアのアボリジニーなどを挙げた。
[続きを読む]
[配布資料のダウンロード]
■セミナーを終えて |
今回のセミナーは定員を上回る多くの企業の参加者を得ることができ、このテーマに関する関係者の関心の高さをうかがわせました。
参加者からは「開発に賛成の先住民族はいるのか」、「出資率が低い場合には発言権がなく、その場合はどのように環境社会配慮を実現していくべきか」、「CSR調達における調達網の複雑さの把握」、「欧米とは違う自然に基づく文化的価値のあり方の発信」などについて質問や意見が寄せられ、終了時間まで熱気ある議論が続きました。
当フォーラムとしては、今後とも責任ある資源調達に関する調査研究やそれを通じた情報発信、政策提言を進めていく予定です。
●日 時 | 2007年10月5日(金) 14:00〜17:00 |
●場 所 | 環境パートナーシップオフィス (住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5−53−67 コスモス青山B2F) |
●主 催 | 地球・人間環境フォーラム |
●協 力 | 国際環境NGO FoE Japan、市民外交センター、「環境・持続社会」研究センター(JACSES) |