持続可能な原材料調達
セミナー「資源開発と先住民族、そしてCSR」開催報告
■ニューカレドニア・ゴロニッケル:開発との闘い (ラファエル・マプーさん/レブ・ヌー代表) |
続いて、先住民族団体レブ・ヌーの代表であるラファエル・マプーさんが、ニューカレドニア・ゴロニッケル開発事業と先住民族の反対運動について報告した。
マプーさんは、ニューカレドニア南部のヤテ村ウニア部族出身で、2002年初めにはニューカレドニア政府の先住民省大臣も務めた。現在は先住民族の権利、自然環境を守るために結成したNGOレブ・ヌーの代表(「レブ・ヌー」とは、大地の目、故郷の目の意)。
ニューカレドニアの人口は24万人、そのうち10万6,000人が先住民族のカナックである。漁業、農業を営み、3000年以上前からこの地に住んでいる。経済の中心はニッケル、観光、水産業。鉱山開発が開始されたのは1850年代に遡る。
祖国の大地から何百万トンものニッケル鉱が掘り出され、 公害だけが残った。山々は血のような濁流を流し、川や 海は真っ赤な泥で埋まった。 |
「カナック人は、先祖と共に住んでいる。先祖は、固有の動物、植物の中に生きているという考えを持っている。したがって、土地、自然の破壊は、先祖の住んでいる場所が破壊され、なくなることになる」とマプーさんは言う。過去のニッケル採掘で生じた鉱山廃棄物によって川は赤くそまり、鉱山の麓の下流でカナック人が公害に苦しみながら、補償もなく暮らしている。
ゴロニッケルは1991年にカナダのインコ社が、わずか1フランでニッケル鉱床を買い受けたことに端を発する。その後同社はブラジルのリオドセに売却された。先住民族からの反対にもかかわらず、港湾や工場の開発や試験採掘が進められ、2008年の操業を予定している。
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ゴロニッケル計画の問題点と影響
マプーさんは次の問題を指摘した。
@1600haにわたる森林伐採を行い、整地工事に着工したのは2002年。しかしながら、南部州当局から建設許可が下りたのは、着工後2年6ヵ月たった2004年10月である。
A事業はICPE(Installations Classees Pour la Protection de l'Environnement)の許可取得(注:特定の施設・事業操業にあたっての環境面から必要とされる許認可)が必要である。2006年にリブ・ヌーが裁判所にICPEの取り消しを求め、認められた。しかし、事業者であるゴロニッケル社は、自己責任として工事を続行。
Bゴロニッケル操業にあたって15年間は事業税を免除することが決定していると言われている。また、建設費が14億ドルから32億ドルに膨れ上がったこと、10%の資本を各州で負担することが強制されている。これらは地元に不利な、略奪的な取り決めである。
また、鉱山開発の影響について、@廃液の海洋への放出、A採掘跡地への鉱山廃棄物の埋め戻し、B地下水への影響、C固有種の宝庫である湿地帯の破壊、D地すべりの可能性(鉱山の麓に住む300人のゴロ族が巻き込まれる可能性がある(写真)、E大気汚染――を挙げた。南部地域は神話の地域でもあり、そこが破壊されることは文化の破壊であること、カナックからの経済的な略奪であることも鉱山開発に伴う影響であることを指摘した。
ゴロニッケル試験採掘地 |
ゴロニッケル積み出し港
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「これは大それた賭けですが、勝たなければならない闘いです」
「このような事態に際して、私たち先住民族は立ち上がりました。大族長アッティティの勇気ある奮闘でレブ・ヌー委員会を設立し、行政当局とインコ社に対して、工場の悪影響をめぐる要求をつきつけました。また事業地にトーテムポールを立て、それが見ているということを表す文化的闘い(写真)、裁判闘争、講演活動、工事現場封鎖などの直接行動も行いました。こうした活動による行政、会社への圧力によって、国際NGOを仲介とした公式の交渉が10月11日から開催されることになりました。私たちの最終的な目標は、この活動を通して、ダブルスタンダードである開発状況を変え、持続可能な開発を実現することです」(マプーさん)。
マプーさんは、これを実現するために、@自然環境が尊重され、事前の環境影響調査が充分に行われているか、A周辺住民とその文化が尊重され、住民の発展に寄与するか、B経済面での適合性:当地(国)の発展に寄与するか。Cすぐれたガバナンス:計画の実施が先住民族、地域住民の「インフォームド・コンセント(事前同意)」の原則に則って行われているか――の4つの原則を挙げた。最後にマプーさんは以下のように締めくくった。
「これは大それた賭ですが、勝たねばならない闘いです。世界の人たちが、この問題を注視し、巨大多国籍企業のどん欲な触手から自分たちの自然遺産を護ろうとする、私たちのような小さな民族の闘いを支援してくださることを願っています」。
ゴロ・ニッケル事業地を見下ろす丘に立てられたトーテム・ポール。「各氏族、族長団を基盤とする文化的闘いのよりどころになっている。毎年7月14日の聖なる日に先祖の精霊を呼び戻す行事を行っている」
工事現場封鎖行動。カレドニア政府とフランス政府の答えは、機動隊による弾圧であった。ゴロ・ニッケル社は、「警備」会社に委託して工事現場をガードし、フランス機動隊が工事現場に常駐している
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