持続可能な原材料調達
発展途上地域における原材料調達グリーン化支援事業
サプライチェーンを遡ってみれば
半島マレーシアのアブラヤシ農園
(c)地球・人間環境フォーラム |
地球・人間環境フォーラムは、環境省が実施する「平成16年度NGO/NPO・企業環境政策提言」に「発展途上国における原材料調達のグリーン化支援」を提出、優秀提言に選ばれた。これは、木材、パーム油、漁業資源、鉱物資源などの原材料調達において、しばしば生産地における環境社会影響が生じている現状に鑑み、これらの調達に当たっての持続可能性の配慮を確立していこうという提言であり、典型的な環境社会影響に関する情報整理、情報の共有化、原材料調達に当たって最低限留意すべき基本的な指針やガイド、生産地支援のためのツール作成などを整備していくという提案を盛り込んだ。
平成17年度は、これらの提案の実現に向けて、成功事例も含む具体的な情報の収集・整理を行い、併せてパイロット事業の立案を行った。特に、木材、パーム油、鉱物資源、漁業資源を事例として取り上げ、また、金融機関の資源開発等における融資方針などの調査も行った。本報告書は、収集した情報を取りまとめたものである。
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表紙/はじめに/目次/
調査概要
序.原材料調達における「持続可能性」配慮の重要性
(1)隠れたフローと隠れた影響 一国環境主義の落とし穴
(2)待ってはくれない自然資源の危機的状況
(3)解決に向けて〜企業の調達基準
(4)認証制度の可能性
(5)金融機関の環境社会配慮
1.木材
1.1 日本の木材需要と世界の森林
(1)日本の木材需要
(2)世界の森林
(3)違法伐採は持続可能な森林経営に対する脅威
囲み 増える中国の木材需要と中露木材貿易
(4)違法ではないが環境社会影響の大きい保護価値の高い森林の伐採
1.2 消費側の取り組み
(1)違法伐採対策に取り組む国際社会
(2)包括的な取り組みを目指す欧州
(3)グリーン購入法で違法伐採対策に乗り出した日本
(4)アメリカの異業種大手企業間の「紙調達ワーキンググループ」
(5)NGO 共同提言と広がる紙の調達方針
囲み グリーン購入ネットワークのガイドライン改定
(6)紙から木材業界へ
囲み パイロット事業 合法性/持続可能性証明木材の促進に向けた事業
2.植物油〜パーム油を例に
2.1 増大するパーム油の生産量とオイルパーム・プランテーション開発
(1)パーム油の生産量と輸入・需要の動向
(2)マレーシア、インドネシアで進むオイルパーム・プランテーション開発
2.2 パーム油の生産における主たる環境社会影響
(1)森林の大規模な消失と生物多様性
(2)違法伐採の併発
(3)森林火災
(4)地元住民の権利の侵害
(5)モノカルチャーによる地域経済と生活の不安定化
(6)労働問題
(7)農薬汚染
(8)その他の問題
囲み インドネシアで世界最大のプランテーション開発計画〜国境プロジェクトのゆくえ
2.3 解決に向けた取り組み
(1)持続可能なパーム油の円卓会議(RSPO)
(2)先進的な企業の例
2.4 持続可能なパーム油は本当に可能なのか?
2.5 まとめと提言
(1)生産側への提言
(2)需要側への提言
囲み 大豆生産に伴う環境社会影響
囲み バイオ燃料輸入に潜む落とし穴〜より持続的なバイオマス利用促進を
3.鉱物資源
3.1 鉱物資源採掘の負の影響
3.2 国際社会及び政府間のイニシアチブ
3.3 業界の取り組み〜ICMM(国際・金属評議会)の「基本原則」
(1)グローバル・マイニング・イニシアティブからICMM へ
(2)ICMM の基本原則の特徴と課題.
囲み 責任ある宝飾のための協議会
3.4 NGO による共同キャンペーンとその成果〜「No Dirty Gold」キャンペーン
3.5 責任ある鉱業と日本
囲み リオ・ティントの取り組み:開発における意思決定と環境社会影響評価の実施
囲み インドネシア・グラスベルグ鉱山:批判を集めるフリーポートの操業
4.漁業資源
4.1 激減する漁業資源と日本
4.2 問題の所在
(1)漁獲
(2)養殖
4.3 解決へ向けて
(1)FAO の「責任ある漁業のための行動規範」
(2)違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策
(3)MSC の漁業認証
(4)消費者向けカードやスーパーマーケット評価も
囲み 立ち上がったシェフたち
5.金融機関
5.1 石油・ガス・鉱物資源分野
(1)鉱物資源採掘プロジェクトへの世界銀行グループの関与に関するレビュー (EIR)
(2)EIR に対する執行部の回答
(3)EIR と執行部の回答に対する政府・NGO の反応
(4)EIR のフォローアップと現状
(5)国際金融機関による歳入の透明性確保の支援
5.2 森林分野、漁業分野他
(1)世界銀行(国際復興開発銀行(IBRD)/国際開発協会(IDA))
(2)欧州復興開発銀行(EBRD)
(3)アジア開発銀行(ADB)
(4)米国輸出入銀行(US-Exim)
事例2:ペルー・カミセア天然ガス開発・パイプラインプロジェクト
(5)英国輸出信用保証局(ECGD)
(6)米国海外民間投資公社(OPIC)
5.3 商業銀行の取り組み
5.4 まとめと提言
添付資料
・添付1 パイロット事業:合法性/持続可能性証明木材の促進に向けた事業提案(案)(英文)
・添付2 RSPO 持続可能なパーム油のための原則と基準(仮訳)
・添付3 西カリマンタンにおけるオイルパーム・プランテーション調査ノート(英文)
・添付4 ニューモント・ミナハサ・ラヤ社とブヤット湾の汚染問題
■調査概要
本調査は以下のような手法で実施した。 (1)発展途上地域における一次産品の環境社会影響の具体的事例の収集・分析 パーム油、木材、鉱物資源などの一次産品について、典型的な環境社会影響事例について収集した。 @ パーム油関連調査(マレーシア:2005年10月、インドネシア:2006年2月) A 木材関連調査(インドネシア:2005年5月) B 鉱物資源関連調査(インドネシア:2006年2月) (2)成功事例の収集 原材料調達の持続可能性を確保するための国際的な取り組みの状況、持続可能な原材料調達のための基準・指標及びその適用、成功事例などを収集した。 @ ICMM(国際金属・鉱業評議会)、EITI(採掘産業に関する透明性イニシアチブ)(イギリス:2005年12月) A RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)(マレーシア:2005年10月) (3)金融機関ヒアリング 資源開発への融資における環境社会配慮のための政策、ガイドライン及びそれらの適用についてヒアリングを行った。 @ アメリカ:世界銀行、米国国際開発援助庁(USAID)、米国輸出入銀行(USEXIM)、国際金融公社(IFC) A オランダ:ABN-AMRO B イギリス:HSBC (4)パイロット事業の実施検討 (1)〜(3)において、さまざまな一次産品についての情報を収集したが、最も取り組みが先行し、事業化の可能性が高い木材についてのパイロット事業の設計を行った。 これは、持続可能な木材利用促進のため、日本及びインドネシア・マレーシアにおける情報データベースの整備及び需給マッチングのプラットフォームとなる「フェアウッド・センター」の設立を行うというもの。事業実施の資金源を確保するため、ITTO(国際熱帯木材機関)への事業提案を行うこととした。この一環として、インドネシア及びマレーシアにおいて、林業関係者、政府関係者、研究者、NGOと意見交換を行った。 @ インドネシア:インドネシア林業省、国際林業研究センター(CIFOR)、Telapak、Forest Watch Indonesia、Walhi、WWF Indonesiaなど A マレーシア:自然資源環境省、半島マレーシア林業局、マレーシア木材協会、森林研究所、マレーシア木材認証協議会(MTCC)、熱帯森林トラスト(TFT)、サバ林業局など 執筆者:満田夏花/坂本有希/野津佳奈子/足立直樹/ハリー・スルヤディ/神崎尚美 他 |