持続可能な原材料調達
セミナー「資源開発と先住民族、そしてCSR」開催報告
■資源開発と先住民族の権利 (谷口正次さん/資源・環境ジャーナリスト、国連ゼロエミッションフォーラム理事) |
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先住民族の権利に関する世界的流れ
セミナーでは、まず国連ゼロエミッションフォーラム理事の谷口正次さんが、世界中の資源の開発現場と環境破壊、人権問題について概観し、現在の獲得競争に警鐘を鳴らした。
谷口さんはまず、今年9月に開催された国連総会で採択された「先住民族権利宣言」についてふれ、「これは世界の人口の5.6%(3.7億人)を占める先住民族の自由・平等・固有文化・伝統・言語を維持する権利先住民族の権利を保護しようというものだ」と評価した。同宣言は、先住民族の自決権・自治権・伝統的に占有してきた土地、資源の所有権を認め、強制移住、土地収用、強制同化を防ぐ措置を各国政府に求めるものでもある。ただし、宣言に法的拘束力は伴わない。
これに先立ち1999年のダボス会議で「グローバルコンパクト」が打ち出された。グローバルコンパクトは、@人権、A労働、B環境、C汚職の4つのカテゴリーと10の原則を尊重することを世界のビジネスリーダーに要請するものである。
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開発と先住民族
グローバルコンパクトは「アフリカ、東南アジア、南米における鉱山開発、天然資源開発に伴う諸問題に対して出されたと思われるほど、その問題は共通している」と谷口さんは言う。
鉱山開発の問題は、下記のような問題が各地で生じているからである。
@人権問題:強制移住、虐殺、拷問、拉致、暗殺
A労働問題:児童労働、奴隷労働
B環境問題:森林、生態系、生物多様性の破壊、大気、水質、土壌の汚染
C汚職:政治、行政、軍の腐敗、贈収賄
谷口さんは、これらの事例として、インドネシア・グラスバーグ鉱山、パプアニューギニア・ブーゲンビル島銅鉱山、同ラムーニッケルプロジェクト、ペルー・ヤナコチャ金鉱山、コンゴ・タンタル採掘、スーダン・石油開発などを挙げた。
「中でも、『汚職・腐敗』が根本的な問題であり、資源が豊かにある国が貧困にあえいでいるというパラドックスがあります。先進国ではありえないようなひどい開発行為が、開発途上国で行われてきており、ダブル・スランダードが生じています。資源を使っている日本人は川下でのCSRばかりが強調され、これらの状況は視野の外に置かれています」。
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先住民族の権利を尊重するということ
資源開発においては、「先住民族の権利の尊重」が必要不可欠である。谷口さんは「先住民族の権利とは、人間として生きる権利、多様な生物の一員として生きる権利、伝統的な生活様式を守る権利、信仰の権利、環境を守る権利、水、食料を得る権利、土地に対する権利、これらの持続可能性に対する権利です」と最後に締めくくった。
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