持続可能な原材料調達
セミナー「資源開発と先住民族、そしてCSR」開催報告
■先住民族の権利と企業:CSRの視点から (足立 直樹さん/株式会社レスポンスアビリティ代表取締役) |
最後に、株式会社レスポンスアビリティの足立直樹さんが、先住民族についての説明と、先住民族の権利と企業の関係について講演した。
足立さんは、まず、「先住民族」の定義や各地の先住民族が共通して直面している、歴史的(植民地化)、物理的(開発、奴隷労働)、文化的(同化、アイデンティティ)な緒問題を解説した。その具体例として、限界以下の貧困にあえぐインドの部落民、失業率が全国の5倍も高いオーストラリアのアボリジニーなどを挙げた。
先住民族の権利に関する条約などとしては、国連の先住民族の権利に関する宣言、ILO条約などが挙げられる。また、GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)ガイドライン、IFC 持続可能性政策、赤道原則など各種の国際的なガイドラインにも先住民族の権利尊重が盛り込まれている。国内法の例としては、フィリピンの先住民族権利法が上げられる。これには、「自由意志にもとづく、事前の、情報を十分提供された上での合意(FPIC)」の実施要件が盛り込まれていることが特に注目される。
足立さんは先住民族の権利と企業の関係について、シェルの先住民迫害問題(ナイジェリア・オゴニ族)、バイオパイレシーなどの事例を紹介し、問題の起こりやすい産業として、鉱山開発、ガス・石油開発、森林伐採、農地開発、製薬、文化・芸術、観光などを挙げた。一方、日本企業の場合には、三菱商事では新規投資案件の際にはJBICやIFCのガイドラインを利用し、社会・環境面に配慮している。また、既存の事業投資先については、社会性についての質問調査を実施し、先住民族についても質問している。
足立さんは、企業は気が付かないうちに土地・資源・文化・移住などに関する先住民の権利を侵害してしまうことがある危険性と、それを回避するために、FPICの重要性を指摘した。また、新規投資や既存の投資先についてガイドライン、条約に則ること、最上流の生産者に配慮を求めることも必要であると述べた。
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