持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「ボルネオの森と日本〜企業には何が求められるのか」(3)
坪内 俊憲/ボルネオ保全トラスト事業責任者
●サバ州におけるパーム油搾油能力
サバ州IJMプランテーションが94年から98年、2003年にかけてのサバ州から輸出されたCPO、粗パーム油のトン数を発表しました。
サンダカン、ラハダト、クナック、タワウと主に4つの港から輸出されています。94年で114万トン、4年後の98年には234万トンと、100万トン以上増えています。2003年には483万トンと4〜5年で倍に増えています。現在、サバ州には112の工場合計で、541万トンの搾油能力があります。FFB(パーム果房、Fresh Fruits Bunch)が2,657万トン処理できる能力を持っているということになります。新たに、建設中の搾油工場が102万トンの能力を持っています。昨年度(2006年)のFFBの生産・売買量が2,564万トンだったので、プランテーションが生産する量よりはるかに大きな搾油能力をサバ州だけで有しているということになります。加えて、新たに10カ所以上のバイオディーゼルプラントの許可証が発行されました。サバ州では今、2カ所のバイオディーゼルプラントが建設中です。その搾油能力は30万トンあると言われています。現在のパーム油の状況はほぼ完売状態で、在庫が積みあがっていないそうです。この状況を考えると、アブラヤシの生産能力の拡大がなければ、これらの搾油工場に投資した人たちは、原材料が手に入らない状況が発生する可能性があります。ということは、新たに森林を伐採してアブラヤシプランテーションを開発していくという圧力がいまだに高いという状況になります。
パーム油生産というのは、巨大産業が大規模に土地を所有して行っているプランテーションがあります。それから先ほどのチャンドランさんの発表でもありましたように、小規模、これは100ha以下のプランテーションが13万件あるといわれています。これらが搾油工場から製油工場に行き、輸出されると、流通していきます。このプランテーションには外国人労働者が多く、工場ではちゃんと教育を受けた現地の人たちが働いている場合がほとんどです。東南アジアで2番目の産油国であるマレーシアですが、原油価格が高騰しているなかで、パーム油の輸出額がついに原油の輸出額を抜いたと報告されました。
植民地支配の前は、タバコや森林利用など、再生可能の資源利用については地域社会に限られており、非常に生物多様性の高いサバ州では、明らかに生産量以内に抑えられた、持続的な利用であったと思います。広大な森林で多様性が高い環境が維持され、数億人分の酸素を供給し、1haあたり400トンという炭素を木の幹、根に固着していました。しかし、植民地支配が始まると、今度は宗主国がヨーロッパに市場を開いたため、低賃金労働者を入れて大きな開発を行いました。当初はそれでもまだ石油燃料による機械化が進んでいなかったために、森林の利益を得ながら十分に多様性を維持することができていました。ところが戦後、石油燃料による機械化が進むと同時に、市場が世界に広がり、安いものが大量に世界に供給されるようになって、周辺の土地から排除された労働者がプランテーションに入ることで大量に商品が世界に供給されて、多様性が減っていきました。
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●関連情報
- シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から〜」(2009年2月)開催案内
- 「発展途上地域における原材料調達グリーン化支援事業 」の報告書はこちら
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