持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「RSPO:持続可能性への挑戦」(3)
M.R.チャンドラン(M.R.Chandran)/RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)顧問
●CSRとパーム油:RSPOの取り組み
RSPOは2004年、民間と産業がパートナーシップを組み、スイスで始まりました。しかし、今はそれを越えるところまできました。本部はチューリッヒ、事務局はクアラルンプールにあります。「サプライチェーン間での協力、ステークホルダーとの開かれた対話を通じて持続可能なパーム油の成長と利用を促進」し、より良い世界の実現にパーム油が寄与することを目標に掲げています。RSPOの使命は、信頼のおける世界基準の策定・実施・検証とサプライチェーンのステークホルダーとの関わりとコミュニケーションを通じた持続可能なパーム油の製造・調達・利用の促進です。基準を設定するのは市場で、企業や政府ではないことを覚えておかねばなりません。すべての商品は、消費者ならびに市場によって決定されるのです。RSPOの特徴としては、マルチステークホルダーの会員制度とアプローチ、自主自立の組織、透明性、包括性、行動志向による明確な結果を志向する点にあります。
RSPOの創設メンバーはUnilever、WWF、Aarhus、Golden Hope、MPOA、Migros、Sainsburyです。RSPOの会員はアブラヤシ栽培企業、パーム油加工・取引、消費財製造、流通、銀行・投資、環境・自然保護NGO、社会・開発NGOの7つのセクターから成り立っています。会費は年2,000ユーロ。「持続可能なパーム油のための原則と基準」採択後、会員数が大幅に増加しました。現在会員数が最も多いのは加工業者です。
会員の内訳は10月2日現在217です。日本の企業は
、加工・貿易カテゴリーでは三菱、日清オイリオ、不二製油グループ、伊藤忠商事です。消費財製造カテゴリーでは、ライオン、コープクリーン、サラヤ、花王にとどまっています。ゼリ・ジャパンや地球・人間環境フォーラムのようなNGOが関わっていますが、パーム油をたくさん使用する企業の皆さんに、もっと会員になって欲しいと思います。
現在16の会員が執行理事会に加わっています。どういうことをやっているかというと、「原則と基準」の開発・テスト、行動規範、持続可能なパーム油のための検証手続き、持続可能なパーム油の取引-サプライチェーンのオプションをはっきりと定義する必要があります。また、コミュニケーションも重要なことです。
「原則と基準」には8つの原則と39の基準、そして127の指標があります。第一線の専門家、科学者が1年間関わって開発しました。8つの原則は、@透明性、A適用法令と規則の遵守。インドネシアではオランダ、マレーシアではイギリスが規則をもともと導入しました。B長期的な経済性・財政的実行可能性へのコミットメント、経済性へのコミットメント。企業は、利益をあげなければ人々、社会的なもの、環境にまで目がいきません。Cベストプラクティスの活用。D環境に関する責任と自然資源及び生物多様性の保全E賃金など、従業員に対する配慮。F責任ある開発。G主要な活動分野における継続的な改善へのコミットメントです。また、国によって状況が違いますので、国内解釈と実施の検討が各国で行われています。「原則と基準」は11月にレビューが行われます。
RSPOの持続可能かどうかを検証する手続きの要素は非常に重要です。検証システムの基準、苦情手続き、要求や証明書の管理を段階的にやっていかなければなりません。一夜にして持続可能性が認証されたパーム油が出てくるわけではありません。例えば、6ヶ月といった期限を与えて企業の努力を促さなければなりません。また、企業の規模が小さいと時間がかかってしまいます。
サプライチェーンに関してはオプションが議論されており、まず分離方式(Segregation)というものがあります。分離方式というのは、製油の施設などを超えても持続可能なパーム油とそうでないものの区分が維持されるということです。また、管理混合方式(Controlled mixing)というものがあり、70%が持続可能、30%が持続不可能のように表示する方法もあります。
また、インドネシアでは35%が小規模な生産です。小規模の農園とは2haから100haが小規模の範疇であり、これも考慮に入れなければなりません。単に企業だけではなく、農園で働く人たちのことも考えなければなりません。
さらに、証書方式(Book and Claim Approach)があり、これによってウェブサイトで購入量を予約をすることが可能です。
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●関連情報
- シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から〜」(2009年2月)開催案内
- 「発展途上地域における原材料調達グリーン化支援事業 」の報告書はこちら
- 「持続可能な原材料調達 連続セミナー」はこちら
- 公開研究会「輸送用バイオ燃料利用の持続可能性と社会的責任―ブラジル報告を中心に」