持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「RSPO:持続可能性への挑戦」(4)
M.R.チャンドラン(M.R.Chandran)/RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)顧問
バイオ燃料に関する議論も既に始まっています。バイオ燃料のためにもっと森林が伐採されるのではないかという心配があります。
2002年に始まったRSPOですが、当時バイオ燃料の話はあまりありませんでした。しかし、今では持続可能なパーム油を生産しさえすれば、それをどう使うかにはRSPOは関与しません。燃料にしようと食料にしようと、あるいは化学業界だろうと持続可能なパーム油は使えばよいということです。RSPOの役割はRSPOの認証を受けた持続可能なパームオイルを生産するということです。どういう形で、誰が使用しても関与しないという立場を明確にしました。
コーンも砂糖も大豆もバイオ燃料です。メキシコでコーンの値段が30%、40%も上がりました。コーンはメキシコの人たちの主食です。小麦も世界で70%の上昇、となればパンも値上がりしてしまいます。8月にコメの会議に出席しましたが、コメの生産がこれ以上増やせないところまで来ており、農業生産は一つの曲がり角に来ているといえます。食料を貧しい人たちに、燃料をお金持ちの人たちに、という議論になっています。このような視点で食と燃料は捉える必要があります。
また、新しい問題も起きています。それは泥炭地でのアブラヤシプランテーションに関する懸念です。また、バイオ燃料作物が肥料を必要とする作物かもしれないということも考えなくてはいけません。
サプライチェーンを通じた需要に関しては、ブランディングをする必要があり、制度をつくってトレードマークを登録しなくてはなりません。そして、それに対するプロトコルも必要ですし、取引のメカニズムも必要です。来週ブリュッセルでこの問題の会議があります。次のクアラルンプールでのRSPO第5回会合も重要になってきます。会合の情報はすべてWEBサイトに公開されます。内容は国別解釈の発表、RSPOコミュニケーション計画、RSPO認証申請、ブランディング、マーク、ラベリングです。そして、持続可能なパーム油の需要が増加するので、この会議は非常に重要なものになります。
先ほど述べたようにパーム油は1ha当たり3.7tを獲得できるので、新しい土地を獲得する必要はありません。新しい土地に頼らずに、生産性を高めることでできるので、生産性は非常に重要です。生産性があがれば1ha当たり10tの油ができます。そして、同じ会社が同時にココナッツを作ることも可能です。したがって、土地は少なく、生産性を高めることが持続可能な農業の眼目です。
●日本はこれから
持続可能な経済システムには2つのトレンドがあります。一つ目は、CSRを重んじるリーダーが出てきていることです。ウォルマート、ソニー、ホンダ、GEなどは、古いビジネスモデルから新しい企業市民へ変わろうとしています。二つ目に、世界経済は急速に再編成されつつあるということです。新しい経済が、時代遅れの手法に取って代わってきています。
最後に、イギリスのアカウンタビリティ社が出したCSRの国際比較のチャートを見ますと、
どれだけの企業、政府あるいは市民がCSRを求めているかが分かります。日本は世界で2位の経済大国でありながら、68ポイントで19位です。
以上です。ご清聴ありがとうございました。
(2007年10月10日東京都内にて)
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●関連情報
- シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から〜」(2009年2月)開催案内
- 「発展途上地域における原材料調達グリーン化支援事業 」の報告書はこちら
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- 公開研究会「輸送用バイオ燃料利用の持続可能性と社会的責任―ブラジル報告を中心に」