持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「持続可能なパーム油とは〜CSRの視点から」(3)
足立直樹氏/株式会社レスポンスアビリティ代表取締役
●パーム油をめぐる新たな動き
製品が作られる過程をサプライチェーンと呼びます。色々な企業、あるいは働いている方が関与しており、全体をチェーン、鎖の様になぞらえる考え方です。最終的に消費者に届くまでの間に、プランテーションが始まって何段階もの企業や労働者が含まれているということです。通常、物はこのように流れていく訳ですが、これを少し逆方向に考えてみて、ここに含まれていないそれ以外の人も考えてみました。
まず考えられるのは、このプランテーションの周りには元々住んでいる地域の方がいます。そこで雇われている労働者がいます。そしてこの両方もそうなのですが、全体を見ているNGOがいます。プランテーションや製油工場、投資する銀行もあります。様々な人々が関与して、それぞれに責任、あるいは出来る事があるのではないでしょうか。生産会社から精製工場、製油工場を辿って、その製油工場から更に搾油工場、そして搾油工場からプランテーションと逆方向に辿って行く事で、もう少し色々な事が出来るのではないのかという取り組みが、数年前から始まっています。
この後、詳しい事はチャンドランさんからお話頂けると思いますが、持続可能なパームオイルに関する円卓会議、RSPOという団体があります。この団体の特徴は、パーム油生産の最上流まで遡って見ていくところにあります。関係する様々なステークホルダーがすべて参加しています。今までの取り組みとして、農園では持続可能にする為に今までとは違う方法で、もっとより持続可能な方法でやろうという努力がなされています。実はこの団体が出来て最初のラウンドテーブルが行われたのが2003年ですが、それ以来色々な事が議論され、今一番重要なのは2005年にP&C、「持続可能なパームオイルを作る為の原則と基準」と言うものが作られました。そして今それをどのように実用化していくかが議論されたり実験されたりしています。今年の11月、来月の後半にはマレーシアのクアラルンプールで5回目のラウンドテーブルが実施されます。この中でどういった形で認証が行われるか、あるいは2005年に作ったP&C、「原則と基準」が本当に大丈夫なのかのレビューなどが話し合われる事になっているようです。
この「原則と基準」には8つの原則があり、きちんと遵守すれば持続可能なパーム油が出来るとされています。この原則の下に更に39の基準があります。原則と基準を守り、製品を世の中に流通させる為にはどのような認証したら良いのか、どうやってトレーサビリティーを確保すべきかといった事柄が関係者の方が集まって議論されたり実験されたりしています。更に問題になるのは、当然こう言う事をやるとお金も掛かってくるのですが、それを皆がやる気をもって取り組むにはどうすればいいのかということもありますし、さらにこのRSPOに参加している企業は沢山ありますがすべてではありません。企業以外の小さな個人農家の様な所もあります。そして残念ながらこういうことに未だ関心を示さない国や地域があります。中国とインドなどと同様に、日本も比較的参加者は少ないのです。このような国や地域の団体をどのように巻き込んでいくのかが今課題になっています。
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●関連情報
- シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から〜」(2009年2月)開催案内
- 「発展途上地域における原材料調達グリーン化支援事業 」の報告書はこちら
- 「持続可能な原材料調達 連続セミナー」はこちら
- 公開研究会「輸送用バイオ燃料利用の持続可能性と社会的責任―ブラジル報告を中心に」