持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「ボルネオ島サバ州でのオラウータン保護活動」(1)
イサベル・ラックマン-アンクレナズ(Dr. Isabelle Lackman-Ancrenaz)/NPO「Hutan(ウータン)」代表
私はフランス人です。夫、子供と共にマレーシアサバ州に移住したのが10年前。そしてサバ州当局と、美しく賢い生き物、オランウータンの調査を始めました。ボルネオでは、オランウータンに関していろいろ問題があることがすぐにわかりました。今でも私たちはサバ州で、地元・政府・民間企業と共に、オランウータンをめぐる複雑な問題の解決策を模索しています。私たちがどのような解決策を実行しようとしているのか、今日お話したいと思います。
●オランウータンを取り巻く環境
まず、オランウータンの話をします。オランウータンは、チンパンジー、ゴリラ、テナガザルと同じ類人猿です。アジアに生息する類人猿はオランウータンだけです。30万年前、オランウータンは中国やジャワ島をはじめ、東南アジアのいたるところに生息していました。しかし今ではボルネオ島とスマトラ島のみになってしまいました。
スマトラオランウータンは7000頭程度しかおらず、問題になっています。ボルネオオランウータンは、100年前は20万頭いたとされますが、現在は4万1000頭。大きく減ってきているといえます。
オランウータンへの脅威は、生息地が急速に失われ荒廃していることです。ボルネオオランウータンは、山や高地を好まず低地に住みます。そのため森林が不可欠です。人間が開発地域として好む川沿いにも住んでいるので、人間とオランウータンの間で大きな対立が生じています。ボルネオでは、非常に影響の大きい伐採がなされ、生息地の6割以上が失われたと推測されています。現在、影響の少ない伐採が試みられています。私たちはサバ州当局と調査を行い、持続可能な森林開発であれば、オランウータンは自然の森と同じような状況で生存が可能であることが分かりました。森林の伐採がオランウータンのために良いとはいいませんが、FSC認証制度の利用など、やり方があるということです。
生息地の分断というのも大きな問題です。オランウータンは、4万頭が集団ではなく、別れて住んでいます。そのため、あまりにも数が少ないところでは繁殖ができず、数世代のうちに絶滅しかねません。密猟、殺害も大きな問題です。オランウータンが殺される主な理由は、農作物保護のためです。オランウータンは、バナナ、パパイア、アブラヤシの芽など、人間が栽培しているものを何でも食べます。人間はこれを有害であると感じています。人間とオランウータンの対立はここにも生じています。スポーツとしての狩、狩猟によっても、オランウータンは減少しています。アフリカでライオンや象を狩って楽しむように、オランウータンをハンティングの対象として考える人がいます。取り引数は多くはありませんが、インドネシアではペットとしてオランウータンを飼う人がいます。また、蛋白源としてオランウータンの肉を食べるという伝統が、一部に残っています。オランウータンの体の一部を薬に利用することもあります。
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●関連情報
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