持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「ボルネオ島サバ州でのオラウータン保護活動」(3)
イサベル・ラックマン-アンクレナズ(Dr. Isabelle Lackman-Ancrenaz)/NPO「Hutan(ウータン)」代表
●キナバタンガンでのさまざまな取り組み@
現在、私たちはいろいろな解決策をサバ野生生物局と行おうとしています。そのひとつに生息地保護があります。これは地元を巻き込んでやらなくてはなりません。WWFのプログラムでは、地元の人をトレーニングして認証を与え、エコガードと呼んでいます。彼らは密猟や不法伐採を逮捕する権限を与えられており、夜の監視も含めてボランティアで取り締まります。そうすることで自分たちの森を自分たちの手で守るという、所有権の感覚を持ってもらいます。地元の人はもともと森の木を伐採して家を作ったり、薬を作ったりしています。突然、保護区だから立ち入り禁止となれば、非常に困惑し、怒ります。だから、何とかして地元が地域の所有権を復活できるように、伐採して利益を得ることばかりではなく、観光など別の形でメリットを享受してもらい、森林保全のモチベーションを高めてもらいます。監視員の導入により、密猟は減少し、目に見える変化がおきました。
もうひとつの問題が象でした。150頭がこの村に生息し、作物を荒らしていました。いつ、どこに現れるかという予測が非常に難しい状況でした。村人たちから何か対策が必要だという声があがり、監視員をインドに研修に送ることになりました。インドでは人間と象の対立を通して、解決策、技術を作った経験があったからです。村の若者たちは、日中どのように象から作物を守るか、夜いつごろくるのか、プランテーションをどうやって守るのか、ということを学びました。幸運にも、キナバタンガンの象は非常におとなしいため、場所を与えてあげると、簡単に象を森に帰せます。これによって村の破壊が90%減りました。このモデルは他の村にも採用されました。地元に力を与え、自分たちの作物は自分たちで守ってもらいます。それに、人間と野生動物の対立を減らし、よりよい関係を築いてもらうのです。
私たちのプログラムは意識向上も目的にしています。地域住民と対話を行いますが、村を一度だけ訪ねて、象を愛しなさい、オランウータンを愛しなさい、保全は素晴らしいといっても、これまでの対立の歴史に加え、資源も減少しているので無理です。本当の意味できちんとプログラムを実行しようとするならば、一度で済むことではありません。ある村とは10年にわたって対話を行い、解決策を模索しています。こういった対話やディスカッションを通して、時には村人からアイディアがあがってきます。私たちコンサベーションNGOは、村人のアイディアが実現するよう、まとめ役として、地元と政府の間をとりもったり、プロジェクトの資金提供者をアメリカやヨーロッパから探したり、パトロール用の自動車やガソリンを購入できるようお手伝いしています。
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●関連情報
- シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から〜」(2009年2月)開催案内
- 「発展途上地域における原材料調達グリーン化支援事業 」の報告書はこちら
- 「持続可能な原材料調達 連続セミナー」はこちら
- 公開研究会「輸送用バイオ燃料利用の持続可能性と社会的責任―ブラジル報告を中心に」
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