持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「ボルネオの森をどう守るか〜生活者の視点から」(3)
加藤 登紀子/歌手、UNEP(国連環境計画)親善大使
●持続可能な生活に必要なのは
地球が72年にSOSを発信して30-35年。日本は急成長しました。私は、オリンピックの年に建ったマンションに住んでいます。皆さんはどうでしょうか。37,8年たって、私のマンションはいつ何時壊れるか分からないといわれています。立て替え問題が起こっていますが、立て替えにはとても大きなコストかかるのでほとんど絶望的です。住居にしてきた人たちは、いつつぶれてもかまわないという覚悟で住んでいます。私たちは持続可能な暮らしをなんとか遂げたいと思い、数年前から大きな声で言い始めました。でも本当に持続型の生活を守れない、それができないというシステムの中に放り込まれてしまっている現実は本当に怖いです。
例えば最初に自給型の生活を今鴨川でちょっとやっているところを見ていただきましたが、夫が昔呼んでいた通りまだ「自給ごっこ」に過ぎません。私たちは大都会に放り込まれて、自給はできません。エネルギーもまったく自給できません。日本という国もまったく自給できていないのです。食べるものも、日本全体では40%といっていますが、東京の場合はおそらく90%近く輸入ものに埋め尽くされているだろうといわれています。でもやってみられることはあります。まず自炊。しましょう。していますか?おかず買ってきて食べますか?お弁当を買っていますか?買っている顔していますね。でも自炊をしましょうよ。自分でお買い物いって、スーパーしかありませんけど、このごろは、産地を全部表現するようになり、現状がありありと分かるようになりました。マグロなど、日本製はもう食べられません。クロアチア製などを見かけます。ほとんどの果物も日本製のものを買うのは難しいです。
でも地方に行くと、地産地消型のマーケットが今とても元気です。だから一般的にいうと、私たちは手の施しようがないくらい、自分の生活を何か言うにいわれぬ、目に見えない、自分では処理しきれない生活の方に放り込まれていっています。少しずつでも自分の生活を自分でマネージメントする必要があります。自分の食べているものが、どうやってどこで作られてきたのか。今、こうやって見ているこの電気。どこから来ているのかというような思いを持ちながら、丁寧に生きていくということは、本当に大切だと思います。本当に少しの油も大切にして、使い終わったてんぷら油も、ディーゼルにもう一回戻しましょう。丁寧な、使った、生ごみそれを何とか肥料に戻すとか。焼却炉に放り込めばいいじゃないかという考え方も非常に大きな問題をはらんでいるので、国が、ごみは全部焼却炉で燃やせばよいというふうにしたとしても、ひとりの人間として、自分の食べたもの、自分の排泄したものの行方を追っていったとき、ちゃんと最後まで追っていけるような、そういう生活をしていくということを心がけたいなと思っています。
幸い、千葉県の鴨川あたりに行きますと、自分で排出したものも自分で処理できる。要するに下水処理施設が完備していなくて、ぼっとん便所でもオッケーです。ぼっとん便所は最近、classic toiletと非常に新しいアイテムとして注目を浴びております、といいたいところです。そういう意味で、持続型の暮らしのほうへターンバックするというのは、とてもありありとした具体的なことだと思います。楽しい仕事だと思います。暮らし方を変えていくということは、とても夢のあることだと思います。大都会に生きていても、心の中は無限に自由です。自分の暮らし方は、自分で選べると、私は思います。
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●関連情報
- シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から〜」(2009年2月)開催案内
- 「発展途上地域における原材料調達グリーン化支援事業 」の報告書はこちら
- 「持続可能な原材料調達 連続セミナー」はこちら
- 公開研究会「輸送用バイオ燃料利用の持続可能性と社会的責任―ブラジル報告を中心に」