持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「ボルネオの森をどう守るか〜生活者の視点から」(4)
加藤 登紀子/歌手、UNEP(国連環境計画)親善大使
●流れ星の正体
本当にボルネオのことはこれから沢山お話があると思います。ダカット村にはもちろんシャワーはありません。水道もありません。一人ずつ、お布団の上に蚊帳がつってあるようなおうちです。ジャングルへ行くというので、すごく恥ずかしいですが、網のついた帽子など買って行きましたが、ほとんどいませんでした。熱帯夜ということもありません。本当に涼しいです。最初はちょっと緊張しました。木に、床にこう穴が開いているところがトイレ。甕に水がためてありました。それ一杯が、私たちのその夜のシャワーです。そういうことが、最初の一日目は、どきどきしましたが、二日目になるともうなんともなくなります。三日目になると、空気、自然の中に触れていることでリラックスしていく気持ちが、どんどん膨らんで、最後去るときは、さびしい気持ちがしました。
ダカット村で男の子たちが、蛍を見に連れて行ってくれました。エンジンを止めて、木の船で、こうこいでいくのです。真っ暗なジャングルの横の道を、音もない船で行きます。ぴたぴたと時々オールの音がするだけなのです。蛍がそれこそ満艦飾のようにいっぱいいるかというと、ジャングルもそうではありません。蛍もやはり宴会するのです。今日はあの木らしいよという情報が飛んできて、これはびっくりしました。空が満天の星で本当に、空が高いのでしょうか、すごく白くて強い光を発している星がいっぱい見えました。その星空の星が、地上に降りてきていました。満天の星とその木はつながっていました。星が降りてきているの?と聞きましたら、その星は蛍でした。私は、一本の高い木に星が、蛍が、集まっていました。千葉県、鴨川の農場にも、蛍はもちろんいますが、見える星の色と、蛍の色は一緒なのかしら?どうでしょうか?なんだか日本で見ている星の色は、少し黄色っぽいような、弱い、やわらかい光のような気がします。日本の蛍は、やわらかい光を発しています。でもジャングルの中の蛍は、まばゆい。自然が作り出した無数の、私たちはどうすることも、数えることもできない。その命の姿です。このようなものに、白い線を引くことは、人間はできますが自然の生き物と自然の風と、自然のすべてのエネルギーがひとつになって、私たちの知らない、無数の形を生み出しています。そういうものと人間が作った世界は、本当に神様は、何だと思っているくらいに、雲泥の差があると思います。だから、本当に人間が作るものももちろん大事、私たちはなくてはやっていけないものもいっぱいあります。しかし私たちがわかっていること、私たちが自分の力で作れるもの、それに比べて、私たちの力では到底及ばないすばらしい力がこの地球の上には生きづいています。生きているということを、忘れないでいたいです。ボルネオのことに関わっていらっしゃる方もいらっしゃると思いますので、是非今日はその星を見に、そして音もしない、明かりもみえない、ジャングルの心地よさをぜひ体感していただけたらと思います。今日は参加させていただき、本当にありがとうございました。
(2007年10月10日東京都内にて)
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●関連情報
- シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から〜」(2009年2月)開催案内
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