持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「インドネシアにおけるパーム農園開発の現状」(4)
ノーマン・ジワン(Norman Jiwan)/サウィット・ウォッチ
●未解決の問題
それから未解決の問題として、法律の矛盾があります。国益のために、商業開発のための土地収用を認めようとしています。つまり、先住民の権利・慣習的な土地の権利をどこまで認めるか、明確ではありません。これは伝統的、集団的な土地利用・所有権をどう認めるか、はっきりしていないことが根本にあります。慣習的な土地利用権がある場所が開発にも使用されるということで、開発の影響は、社会的にも環境という面においても、どういった結果をもたらすのでしょうか。それについて、強制的な規則で対応するか、それとも自主的な取り組みを求めるのか。
RSPOのような国際市場メカニズムを活用する中では、自主的な基準がある一方で、国内解釈はどうするのか。この間にギャップがあります。また、規則や原則、持続可能性の尺度基準に違反するというような苦情があったとき、それをどう対処するのか。それから加工・流通過程の管理。どこから調達するのか、どう管理するのか。エンドユーザーはある商品が、持続可能性があるものか否か、どのようにすれば自信を持つことができるのでしょうか。それから、EU指令によって、例えばバイオ燃料の強制的な目標を設定したりしますが、それをどう対応するのか、あるいは規制がないインド、中国の状況にどう対応するのか。再生可能なエネルギーの需要にどう対応するか。社会的な問題などわれわれの手の及ばない部分もあります。
ではCSRの前提条件として、まず、CSRが確立されていかなくてはなりません。これは国の担当分野です。そして利用する権利と管理する権利の間にバランスがなくてはなりません。それから地元の人々に対して、土地の平等な利用を確実たらしめることが必要です。パーム油のみならず、他にも作物があります。インドネシアでは米を作っています。それからCSRにいたる以前に、紛争の解決が重要です。先ほど500あまりの社会的紛争があると述べましたが、それをまず解決する必要があります。
消費者側は、社会的な責任にきちんと対応している企業かどうか見極める必要があります。それからCSRは、政府の役割を壊したり横取りしたりしては困ります。生産者は、開発は進めますが、政府の役割である道路を作ったり、施設を作ったり、学校を建てたりという役目には踏み込みません。それから自由意思にもとづく事前の情報を提供された上での合意の原則に従うということです。
アブラヤシはこれまでモノカルチャーとして盛んに行われてきました。アブラヤシはいまや食用油としては、取引量が一番多いものです。そして出回っている製品の60以上に使われている。正しく使えば、人々に雇用を生み出し富の源泉になります。しかし対応を間違えればアブラヤシによって土地を奪取、生活基盤の喪失、紛争、労働搾取、生態系の荒廃といった問題を招きかねません。われわれ、とくに社会的NGOにとって、持続可能なパーム油は不可欠です。そのためには以下の9つの点を押さえておく必要があります。国際法を重んじること、慣習法の権利を重んじること、自由意思にもとづく事前の情報を提供された上での合意の原則に従うとこと、プランテーションの開発において暴力を禁止すること、アブラヤシの植え付け、再植林に関して燃やさないこと、原生林や非常に価値の高い生態系の土地変換を行ってはならないこと、地元コミュニティに正当な土地の権利がある場所にパーム油の開発の認証を与えてはならないこと、労働者の権利を尊重すること、そして男女平等を尊重することです。
最後に、私たちは「正義なき開発は、搾取」であることを忘れてはなりません。
(2007年10月10日東京都内にて)
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●関連情報
- シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から〜」(2009年2月)開催案内
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