持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「RSPO:持続可能性への挑戦」(1)
M.R.チャンドラン(M.R.Chandran)/RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)顧問
今日のテーマはまず、油脂シナリオにおけるパーム油の重要性についてお話したいと思います。それから持続可能な経済システムとは何なのか、そしてビジネスとCSR、CSRとパーム油についてもお話します。その後、RSPOの取り組みを経てまとめに入ります。
●油脂シナリオにおけるパーム油の重要性
まず、油脂シナリオにおけるパーム油の重要性とは何なのでしょうか。
産業に関連するステークホルダーとは何でしょうか。まず政府、プランテーションから小さな農業者にいたる上流の生産者があります。そして、下流では製油所、パーム油を基にした製品があります。それから投資家、銀行の各機関があります。そして、政府の機関があります。MPOB(Malaysian Palm Oil Board)というのは、マレーシアパームオイル庁です。またNPOや労組、雇用者の組合、業界の組合もあります。例えば、MPOA(Malaysian Palm Oil Association)はマレーシアパームオイル協会で、MPOC(Malaysian Palm Oil Council)はマレーシアパームオイル評議会で、MPO、A・B・Cと揃っています。そして、世界で数十億tのパーム油の輸出、輸入が行われています。バイオディーゼル、バイオエネルギーセクター分野でも今一番先行しています。それから、マレーシアのディーゼル協会等が3週間前にできたばかりで話題になっています。そしてRSPOは、持続可能なパーム油のための円卓会議のことです。
マレーシアにおけるパーム油産業は、紅茶、コーヒー、ココナッツと並ぶ重要な産業です。世界のパーム油生産の50%を占め、輸出・輸入の60%を占めています。
この輸出・輸入、貿易というのは非常に重要です。マレーシアでは、生産の90%が輸出されており、60万人を雇用しており、経済にかなりの影響があります。200万人がこの産業に依存しています。今、マレーシア人一人当たり20本のオイルパームが植わっており、全部で5億本です。これほどのオイルパームが植わっている国、そして、一人当たりの本数がこれほど多い国は他にないと思います。
つづいて、世界におけるパーム油の重要性についてお話します。5,000年前にエジプトで生産が始まったパーム油。今では150カ国以上で、食料、エネルギー源として消費されています。栄養があり、健康上のメリットもあります。そのためにアメリカ人や日本人のパーム油の需要が高まっています。また、パーム油はバイオエネルギーでもあり、代替エネルギーとしても使われています。さらにhaあたりの生産性も非常に高いです。他にも油糧・油脂作物がありますが、パーム油の生産性は高いです。
パーム油はどのようなところでつくられているのでしょうか。基本的にはインドネシアとマレーシアです。そして、今年はインドネシアが1,700万tで一位になります。マレーシアは第二位です。世界のパーム油の87%がインドネシアとマレーシアで生産されています。
世界のパーム油の生産と貿易を見てみましょう。貿易では、全ての油糧・油脂、1億5,000万トンのうち、52%がパーム油です。大豆は生産国の中で消費されているので1,800万トンです。つまり、大豆は油のためではなくて、食料、タンパク質のためにつくられています。つづいて、世界7大植物油の生産地域、生産高を見てみます。生産地域が22億2,000万ヘクタールで、その内42.5%が大豆で、パーム油はたったの4.8%にとどまります。
パーム油の去年の生産高は核油、パーム関連も併せて34.70%で、大豆は29.8%です。大豆の生産地域が42.5%を占めることと比べれば、パーム油は生物学的な利点があるといえます。
7大植物油ですべての植物油の98%を占めています。生物学的な利点といいましたが、パーム油は1ha当たり3.74t生産できます。他の植物を見ると、ナタネが0.48tです。ドイツでは1t以上になるところもありますが、他の地域では1tをはるかに下回ります。アブラヤシは他の植物性油の原料作物に比べて11倍も生産性が高いということになります。
一人当たりの食用油の消費量を世界的にみると、平均は21kgです。
アメリカ、ヨーロッパは50kgで、肥満の問題があります。消費しすぎです。世界の人口の40%を占めるインドネシア、インド、中国を見てみると、平均の消費量にはまったく届きません。平均消費量に届くためには1,400万tを追加生産する必要がありますが、その土地はどこにあるのでしょうか。農業生産性は、1年で1〜2%しか増えません。したがって食糧を届けたいと思うと、生産の課題が浮き彫りになります。
私の友人でドイツにいるトマス・ミルケーと、ロンドンにいるジェームズ・フライが一緒に予想したものがあります。2020年には人口は78億人になります。そして、人口一人当たりの年間の食物の平均消費量が30kgになります。そうすると、2020年までに油・油脂の年間の増加率は17%になります。人口、繁栄によって需要が変わりますが、14年間で57%にあたる8,500万トンを生産しなければなりません。どうしたらいいでしょうか。
中国で面白い調査がありました。中国の経済成長率はこの10年間、平均で8%です。大豆の消費量、タンパク質の消費量も8%です。大豆ミールが鶏肉業界で餌として使用されています。人口の多いインドネシア、インド、メキシコ、ブラジルのGDPから見ると、もっと油脂を生産しなければなりません。そうしないと、世界がお腹を空かせてしまいます。
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●関連情報
- シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から〜」(2009年2月)開催案内
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- 公開研究会「輸送用バイオ燃料利用の持続可能性と社会的責任―ブラジル報告を中心に」