持続可能な原材料調達
緊急報告:危機に立つ生物多様性
「天国に一番近い島」で今何が? ニューカレドニア・ニッケル開発事業を事例に
■ イントロダクション〜ニッケル開発と私たちのくらし〜日本人として直視すべきこと
(清水規子/国際環境NGO FoE Japan) ) |
最初に国際環境NGO FoE Japanの清水規子さんが、事業の概要と日本との関わりについて説明を行った。
FoE Japanは世界80カ国にネットワークを持つ国際環境NGOで、国内外の様々な環境・社会問題に取り組んでいる。開発金融と環境プログラムは、開発金融が支援する事業によって引き起こされる環境問題の解決・改善のために活動している。
●FoE Japanと事業との関わり
2004年に日本企業(住友金属鉱山と三井物産)が事業への参画を決定した。JBICが融資を検討しているという情報もあり、2005と2007年にニューカレドニアのNGOなどが来日し、事業の環境影響に対する現地NGO・先住民族団体の懸念について、企業、JBIC等と会合を持った。2007年に現地を確認のため訪問。2009年1月には、JBICが融資を検討しているとの情報が公表された。FoE Japanとしては、過去先住民族からの懸念が表明されていたため、この事業はJBIC環境社会配慮ガイドラインを踏まえているのかを確認するため、2009年4月に再び現地訪問を行った。現地では政府環境局や企業、先住民族議会など様々なステイクホルダーと会合を持った。
●事業概要と経緯
ニューカレドニア本島の最南端、南部ゴロ・プロニー地区に事業地がある。事業者の資本構成は69%がVale Incoでブラジル資本。21%は日本企業。採掘されたニッケルは大量の硫酸を利用して高圧で製錬される。また、その生産過程において大量にでてくる廃棄物の廃棄場所がテーリングダム。ニッケル抽出の際に大量の水を使う。リサイクルする水も多いが、処理後パイプで海に排水す
る量も少なくない。
事業の経緯としては、2002年に建設を開始したが、過剰支出のため中止に追い込まれた。2009年には段階的に生産を開始する予定だったが、4月に硫酸流出事故がありその後は80%の操業中止中である。事業はスムーズに進んできたわけではない。現地での反対運動を始め、カナダのInco社を訪問しての反対表明、道路封鎖と事業者による訴訟、工事差し止め判決など直接闘争だけでなく法廷闘争も含め、現地の根強い反対があった。2008年の先住民族との協定締結前にも直接行動があった。反対運動の中、事業が進んできた。
●日本人とニッケル
ニッケルは非常に身近な金属で、特に戦後はステンレス工業の発展に伴い需要が増大してきた。ニューカレドニアは世界第2位の埋蔵量を持ち、生産量は世界5位。日本の消費量は、世界第2位。日本のニッケル輸入量のうち1割がニューカレドニアから来ている。
日本はニッケル大量消費国だが、少し川上を見るとこの事業地は非常に自然豊かで、しかも先住民族が暮らしている場所である。私たちの暮らしが海外で現地の人に迷惑をかけている可能性がある。資源開発については総合的な取り組みが必要で、政府の政策、融資機関、企業、NGOや市民の暮らしも考える必要がある。今日は特に事業に対する融資機関の責任に焦点を当てて話しを進める。
[配布資料のダウンロード(PDF、3MB]
●日 時 | 2009年6月3日(水) 14:00〜16:30 |
●場 所 | 環境パートナーシップオフィス(EPO) 住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山B2F |
●主 催 | 地球・人間環境フォーラム、国際環境NGO FoE Japan |
●後 援 | 生物多様性条約(CBD)市民ネット |
●協 力 |
特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC) 「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 環境を考える経済人の会21(B-LIFE21) コンサベーション・インターナショナル サステナビリティ・コミュニケーション・ネットワーク(NSC) サステナビリティ日本フォーラム 日本環境ジャーナリストの会(JEFJ) 社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS) 日本消費者連盟 IUCN日本委員会 WWFジャパン |