持続可能な原材料調達
「パーム(椰子)油とCSR」開催報告
「サラヤとボルネオの生態系保全」(1)
更家 悠介/サラヤ株式会社代表取締役社長
更家です。先ほどはゼリ・ジャパンの理事長としてお話させていただきましたが、今度はサラヤの社長としてお話をさせていただきます。
●サラヤのヤシノミ洗剤
先ほどもお話しましたが、ビジネスのやり方が色々と変わってきています。ビジネスはお金をもうけることでしたが、今はそれだけではいけません。例えば、環境に優しくあるべきだと言われます。みんなとやっていくとなると、新しいネットワークを作ろうということになります。その場合目的と関係が変わってくるので、私もこのプロジェクトに参画して、皆さんと親しくなり、ビジネスが持続可能なものになればいいと思っています。
私たちは植物性の家庭用衣料用洗剤や台所用洗剤、手洗い石鹸を作っております。基幹となっているのは、ヤシ油とパーム油を使用したヤシノミ洗剤で、30年以上同じブランドで売っております。植物性のものは生分解性が良く、70年代から製造しています。当時は石油系のものが多かったですが、洗剤が分解されずに河川に残り、風が吹くとアワが飛ぶ様な状態で、水質汚濁の原因にもなりました。植物性のものにはそういった問題は無く、包装資材にも気を配り、つめかえパックの利用を促して環境負荷が少ないことを売り物にしました。
アブラヤシは年中実がなっており、年に10回ほど収穫ができます。1房には実が1,000個〜2000個ほどあり、種子を搾ったものが「パーム核油」、果肉を搾ったものが「パーム油」です。ココナッツは実を搾りヤシ油をとります。パーム油の9割程が、揚げ油、菓子スナック、インスタント麺、マーガリンなど食用油脂に使われています。あとの1割が工業用原料で自動車のクッション材や、印刷用インキ、石鹸、洗剤などが作られています。
●サラヤの転機
私どもの製品は自然に優しいとプライドを持ってやってきました。転機が訪れたのは2004年8月1日。「素敵な宇宙船地球号〜小象の涙」というテレビ番組が放映され、アブラヤシのプランテーション拡大により、ボルネオゾウをはじめとする野生動植物の生息地が侵食され、様々な問題が起こっていることを知りました。そこで、社外から専門調査員に来ていただいてボルネオの実態調査などを行いました。まず、この番組で取り上げられた小象の窮地を救うため、現地の団体と協力して「小象の救出作戦」として活動することにしました。
アブラヤシのプランテーションは農業というよりは資本主義の一形態です。パームは1haで約3.7tの油が取れます。これは大豆の10倍の面積効率で、ビジネスが大規模化をどんどん押し進めていることも、覆すことのできない事実なのです。マレーシアでは、トラやサイ、オランウータンなどすべてが絶滅に瀕しています。ヨーロッパでは「クッキーは他にも作る方法があるが、野生動物は1度絶滅すると作る方法はない」といわれ、パーム油に対する風当たりが強いです。
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●関連情報
- シンポジウム「生物多様性と企業の役割〜パーム油の現場から〜」(2009年2月)開催案内
- 「発展途上地域における原材料調達グリーン化支援事業 」の報告書はこちら
- 「持続可能な原材料調達 連続セミナー」はこちら
- 公開研究会「輸送用バイオ燃料利用の持続可能性と社会的責任―ブラジル報告を中心に」