持続可能な原材料調達
セミナー「資源開発とCSR〜環境社会影響とその対策〜」開催報告
■日本企業に求められる環境社会配慮とは〜国際協力銀行の経験より (岡崎 克彦さん/国際協力銀行環境審査室室長) |
●資源に依存する日本と国際協力銀行の使命
日本は世界に資源を大きく依存しています。石油に関しては国内の自給率がわずか0.1%。日本に入って来る総輸入量の内、国際協力銀行が関与している割合が17%。それから天然ガスの国内の自給率が4.1%。日本に入って来るものの90%以上を国際協力銀行が融資しています。鉱物、鉱山資源、石炭、銅、鉄に至っては日本では一切獲得することができません。すべて海外の輸入に依存しているということです。こうしたものを海外で開発するプロジェクトから、日本に実際に入って来る量、JBICが融資した山から出てきたものが全体の輸入にどのくらい占めているかというと石炭で40%、銅鉱石で20%、鉄鉱石で63%です。
私が所属する国際協力銀行(JBIC)は、政府の方針に基づきまして、今年の10月に組織が二つに分割されますが、企業向けの融資を行っている国際金融等業務部門は、新しく誕生する日本政策金融公庫の国際営業部、海外業務として引き継がれます。この組織に与えられた最大のミッションが資源の確保です。行政改革の議論の中でも、日本が世界に一定の影響力を保ち続ける、あるいは国として、みなさんの生活も含めて今のレベルを維持・安定させていくために資源の確保は不可欠である、そういう議論がされています。
●ESGリスクに対処する
一方、企業が持続可能な活動をしていくというためにはESG(環境・社会・ガバナンス)リスク対応が不可欠になってきました。大切なことは、持続可能な経営、社会への貢献ということを会社が自分だけの判断や思い込みだけでやるということではなく、ステークホルダーの信頼、理解を得てすることです。そのことによって初めて、企業の信頼、あるいは企業価値というのが高まります。日本、あるいは他の先進国で、資源の恩恵を実際に受けている、あるいは日々の生活で資源の恩恵を受けて生活をしている消費者もステークホルダーではないかなと思います。
JBICは、日本企業が参画する資源開発に関与しています。海外で山を切り開いたり、そこから出てくる鉱物資源、あるいはエネルギー資源を日本に輸出したりするプロジェクトに対して融資の面で積極的に支援をします。と同時に、プロジェクトの環境社会影響に対しては、JBICの環境社会配慮ガイドラインに基づき、日本企業が行っているプロジェクトで、きちんと適切に環境社会配慮がなされているかということを確認し、現地の環境あるいは地域社会に配慮した取組みということを日本企業に対して働きかけていきます。こういったことを通じて、日本企業の海外プロジェクトに対して支援をしてきています。
●融資機関としての環境社会配慮確認
鉱山プロジェクトと石油天然ガスプロジェクトに実際に私どもが融資する場合に、プロジェクトの財務面での審査に加えて、環境社会配慮確認のための審査というものがあります。これをチェックするためのリストがあります。地域住民への説明、そしてプロジェクトが与える影響に対して、例えば発生する汚染に対してどのような対策がなされているかですとか、そして自然環境にどのような影響があるか、それに対してどのような対応が取られているかということがあります。社会環境についても住民移転の問題から生活再建支援についてどういったことがなされているかをチェックします。それから工事中の影響ですとか、文化遺産、景観、少数民族・先住民族、工事中の影響、そしてモニタリングといったことを具体的に確認していきます。
JBICは政府系の金融機関として、日本企業が行う海外事業を支援するという立場にあります。JBICがプロジェクトを行う訳ではありません。したがって、我々ができるとことは、企業がJBICから資金を借りてプロジェクトの獲得に乗り出すという場合に、JBICから融資を断られないようにして下さいと求めていく立場であります。ガイドラインやチェックリストを公にして、プロジェクトの開発や資源獲得において、JBICの資金を活用する場合には、こういったことが将来チェックされるんだなということを示すことで、企業の環境社会配慮を働きかけています。
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