持続可能な原材料調達
セミナー「資源開発とCSR〜環境社会影響とその対策〜」開催報告
■資源の開発とコミュニティの苦難(ニモ・アドルフ・バシー/FoE ナイジェリア) |
私は15年にもわたり、環境や社会問題に関する活動を行っていますが、以前は人権運動に力をいれていました。ナイジェリアでは、逮捕、拉致、拷問を受けたりと様々なことが政治的な理由で生じ、計画的に住民の運動を押さえつけようという動きがあります。これが最も顕著に現れたのが1995年です。ケン=サロ・ウィワという環境活動家が処刑されたのです。ナイジェリアは、1億4千万の人口をもつ大きな国であり、250の民族が存在し、それらが異なる言語を話す、美しい国です。こうした美しい国が維持されるべきというのが我々の考え方です。
●石油に依存する国、文明
ナイジェリアは、鉱業が外貨収入の90%、国家予算の歳入の85%となっています。鉱業が発展するプロセスが国の政治、経済や社会に破壊的な影響を与えてきました。政府も企業も石油という一つの資源に頼る国になっていったのです。
私たちの文明は、石油中毒、石油依存になっています。ナイジェリア南部、ナイジャデルタの沖合、サオトメ島では、さまざまな企業が石油を採掘しようと競争があります。原油の42%がアメリカに輸出されます。日本へ輸出される量は限られていますが、日本企業の役割が大きくないというわけではありません。
●責任を果たさない企業
石油産業は今日のナイジェリアで、もっとも汚染の激しい産業といえます。環境破壊は人々の生活そのものの破壊です。パイプラインが地上を走っていますが、安全なものではないんです。設備の不備や錆が原因で油の流出もよくおきています。パイプラインは20年ごとに取り替えなければならないのですが、40年も使いっぱなしのものも多いのです。人々は資源を利用するだけで、それがどういう破壊的な影響を与えているのかを考えません。熱帯雨林でパイプラインを引くために、周囲の木を切り倒し、森林破壊のペースが速まり、住民との対立が高まります。
油田開発で一番不満の多いのは、油の流出です。2006,2007年の間、764件の流出がありました。1980年、シェブロンはギニア湾に40万バレル、シェルのフォルカドス・ターミナルのタンク事故では58万バレルが流出しました。そこに住んでいる人々は、水は川から取り、飲料水、レクリエーションの場でもあり、家族菜園も営んでいます。
しかし、流出が起きても、一件たりとも除去作業が行われていません。どこか一箇所でも流出除去したところがあるのかということを、石油会社に追及したいところです。
●声を上げるコミュニティ
油田から発生する随伴ガスの燃焼も大きな問題です。硫黄酸化物が生じ、酸性雨となり家の屋根を破壊したり、人びとがガンになったりする。随伴ガスの放出や燃焼は、地球温暖化にもつながります。これは国境を越えて影響を与えるわけです。ですから、世界のどこであろうともきちんと対応しなければならない。
国境を越える影響を与えるガスの燃焼 |
私たちは随伴ガスの燃焼を止めるようにという闘いをこれまで続けてきました。シェルは、2008年、世界でガスの燃焼を止めるけれども、ナイジェリアでは止めないと表明しました。その理由は余りにも遠隔地だからというものです。そして、生産も止めることはできないという。いくら遠隔地にあるからといっても人々を苦しめるものであれば、生産を止めるべきです。
2005年7月、ナイジェデルタのいくつかのコミュニティがナイジェリアの裁判所にガス燃焼の停止を求めて提訴を行いました。同年11月、シェルに対して、コミュニティの一つでのガス燃焼を停止するよう判決が下りました。判決ではガス燃焼は「原告の基本的な生活の権利(健全な環境、人間の尊厳を含む)をひどく侵すものである」とされました。
このように、コミュニティは声をあげることによってこそ状況を変えることができると思います。そして、企業側は、コミュニティの声に耳を傾け、行動を変えることが求められています。
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