開発プロジェクトと金融機関
連続セミナー「持続可能な社会のためのODAと公的融資」第1回
−海外開発プロジェクト融資の「環境、社会、ガバナンス」強化に向けて−
開催報告
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JBIC のガイドライン実施状況レビューについて〜国際的な視点から
(田辺有輝/「環境・持続社会」研究センター(JACSES)) |
続いて、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)の田辺有輝さんが、JBICのガイドライン実施状況レビューについて発表を行いました。
現行ガイドラインの見直し規定としては、実施状況についての確認を行う、施行(03年10月)5年以内に包括的な検討を行う、その結果、必要に応じて改訂を行うということになっています。
政策金融改革の結果、2008年10月よりJBICを再分割することが決定されました。国際金融等業務、もとの日本輸出入銀行の部門は、日本政策金融公庫という新しく発足する機関の海外部門になります。また、円借款業務は国際協力機構(JICA)と統合されます。
両部門の環境社会配慮の実施確認および改訂プロセスを見てみましょう。
国際金融等業務+日本貿易保険(NEXI)は、11月に第一回コンサルテーション会合を開催しました。会合で実施状況確認調査報告書が発表されました。
円借款業務+JICAは、現在、有識者委員会の委員を選定中です。第一回委員会前に報告書を発表予定だそうです。
それでは、JBICの国際金融等業務部門が行ったガイドラインの実施状況確認調査の内容を見てみましょう。この調査は下記の二つのフェーズから成ります。
・ フェーズ1(文献調査&スタッフへの聞き取り調査):03年から07年までの615件中85件について、JBICが実施すべきプロセス要件(カテゴリ分類状況、情報公開状況等)について調査 ・ フェーズ2(文献&部分的なヒアリング調査):カテゴリAの30件についてガイドラインの要件を満たしているかどうかを調査。 |
・ スクリーニング、カテゴリ分類、環境レビュー、情報公開、意思決定・融資契約等への反映、モニタリング実施状況について、「ほぼ全ての案件で適切に実施」(報告書より、以下カッコ内は同様)
・ 調査対象案件(30件)については、「負の環境影響を回避・最小化・緩和する対応策が適切に実施」 |
@調査方法が不十分である
IFC(国際金融公社)、ADB(アジア開発銀行)などが行った同種の調査においては、文献調査に加え・現地訪問を行い、被影響住民等からも聞き取り調査を行い、さらにスタッフへの聞き取りやアンケート調査を実施しています。しかし、報告書を読む限り、JBICはこのような丁寧な調査は行っていません。 Aガイドライン上の要件の実施状況が不明確 例えば、以下のガイドライン上の要件の実施状況が不明確です。 ・ 第三者から指摘があった場合のJBICの対応 ・ 代替案・緩和策の検討 ・ 社会的合意のための十分な調整、社会的弱者への配慮 ・ 移転・生計手段喪失を回避・最小化するための対策の検討 ・ モニタリング結果のステークホルダーへの公開 ・ 地域住民が理解できる言語と様式による書面の作成 ・ 環境アセスメント報告書に関する協議の実施 B調査範囲が限定的である CJBICの判断の妥当性やガイドラインの効果が不明確 D不遵守への対応が不明確 30件中1件で、コンサルテーションが実施されていない、3件でEIAが公開されていない、1件で住民移転計画が策定されていないなどのガイドライン不遵守の可能性のある事項が記述されていますが、これらの対応が明確にされていません。 |
結論としては、本調査のみではガイドライン改訂の論点整理が極めて困難であり、追加調査が必要であると考えています。これらの点につき、JBICに要請を行ったところです。
[配布資料のダウンロード]
[JBICガイドライン実施状況確認調査報告書をダウンロード(JBICのウェブサイトより、PDF)]
[JBICガイドライン実施状況、NGOが追加調査を要請(FoE Japanのウェブサイト)]
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