中華人民共和国政府は同国の経済発展において環境保護を非常に重要視している。1980年代初頭より、中国政府は環境保護を基本的な国家政策と位置づけており、継続的に多くの施策を実施してきた。その結果、急速な経済開発の期間中も環境の質の低下を防ぐことができた。1992年にブラジルで開催された「環境と開発に関する国連会議」以降、中国政府は環境保護を実施するため効果的な一連の項目を導入した。そのうちの非常に重要な項目が「中国アジェンダ21」の承認であり、これは総合的な持続可能な開発方策を実施し、環境関連法制度の整備を促進させるという中国の意志を示したものとなっている。第九中国五ヶ年計画と長期展望2010の中でも環境保護はこれまでになく高い戦略的位置を占めている。
中国は経済開発と環境保護という二重の問題を抱えている。経済が急成長している間は環境と開発は相容れない面がある。都市部を中心とした環境汚染は今でも悪化しつつあり、地方に拡大している。生態系における環境悪化の範囲も広がっている。開発途上国である中国は現時点では公害を処理するのに充分な資金能力を持っていないが、環境保護における過去の経験で分かったことは、一部の環境問題は資金なしかごくわずかの資金で解決できるということだった。こうした問題は多くの場合、不適切な管理によって引き起こされている。これらの問題を解決する一番よい方法は環境関連法制度と環境行政の整備を促進し、法律面から環境を厳密にモニターし、管理することだ。
シェンヤンは中国の重工業の拠点であるため、無数の工場が毎年膨大な量の材料とエネルギーを消費し、同市に深刻な環境公害をもたらしている。シャンヤン市庁(SMG)は近年、環境関連法制度と環境行政の設置に焦点を置いてきた。これまでに14の地方環境法と行政規定が国家法とシェンヤンの実情にそった形で発効している。シェンヤンの環境の総合監督・管理を担当しているシェンヤン環境保護局(SEPB)も環境関連法を継続的に施行する機能を強化した。SEPBの主な任務は:
環境監理チームは現場検査を行い、市全体の不正な環境行為を見張る法律執行機関である。現在、シェンヤンには300人以上の法執行スタッフがおり、法執行をかたどったマーク付きの制服を着ている。執行チームの車両にもマークがついている。環境監理チームは一般向けに電話を一本開放し、環境問題に関する市民からの通報を受け付けている。車両は24時間体制でスタンバイしている。環境不正行為を早期に発見するため、SEPBは300人以上の環境管理者をコミュニティや市民から募り、管理体制を敷いている。環境関連法を実施し、行政の法的資格を拡大し、不正行為の取り締まりを公正かつ客観的に行う要件としてSEPBは綿密な法執行手順を設定した。以下に主な項目を挙げる:
処罰以前の通告 | 企業に警告を与え、制限時間内に違法慣行を是正するよう指導する |
↓ | |
行 政 処 分 | 企業が違法慣行を是正しない場合、行政処分を行う |
↓ | |
刑罰実施の申請 | 行政処分を拒否する企業には刑罰を実施するよう地方人民裁判所に要請する |
環境保護法廷は行政の介入を削減し、地元の保護のため努力してきた。これまでの例をみると、法律を犯したかどで罰金を課せられたり、倍額の公害排出料金を徴収されたり、環境保護省庁によって業務停止を命じられた企業は調停を行い、情に訴えるか、あらゆるコネを駆使して環境保護省庁に圧力をかけるかして刑の軽減を求めるケースが多い。行政処分の実施を延期するための言い訳をいくつも言い立てる企業もある。市レベルの政府機関が違法企業を扱う際に、地区(郡)レベルの政府機関は地元利害が絡んでいる場合、支援をためらうケースもある。違法活動の増加や環境問題に関する市民の主張などよくない結果も多く残された。こうした異常な傾向は環境保護法廷の設置によって急速になくなった。これまでに法廷は213件の事件を扱い、公害排出料金と罰金で総額1020万元RMBの徴収を申請した。 中国は計画経済から市場経済に移行しつつある。市場経済では企業は常に金銭的な利益を再優先し、その過程で環境保護が無視されることも多い。法律を犯して公害を排出する企業にそうした活動をやめさせるためには経済開発、そして環境保護法制度の整備と環境保護を執行する資格の強化が必要で、長い時間が必要となる。シェンヤンはUNEPとUNHS (Habitat)によって「持続可能な都市プログラム」のパイロット都市に選ばれた。シェンヤン市開発の目標は「科学技術の発展、大規模な生産、大規模な物流、国際化、近代化」となっている。将来、環境保護問題はこれまで以上に増大すると思われる。法律を通じて持続可能な方法を発展させるのがシェンヤンの長期的な目標である。
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