20%logo


「CO2削減のためザールブリュッケン市が導入した省エネ・再生可能なエネルギー利用施策」

ザールブリュッケン市エネルギー・環境部長 ユルゲン・ロッテルモーゼル




1. CO2削減プログラム

    ザールブリュッケン市は1991年に国際環境自治体協議会(ICLEI)の二酸化炭素削減プロジェクトに加盟し、以来取り組んでいる。ザールブリュッケン市はこの極めて興味深いプロジェクトの枠組みの中で、この市独自の状況に適合する二酸化炭素削減プログラムを考案した。このプログラムは市議会の入念な審議の後、1993年6月に採択された。
    このプログラムの全体的な目標はエネルギー消費と交通によって出る二酸化炭素の排出を1990年から2005年までの間に25%削減するというものである。1990年の二酸化炭素総排出量は195万2千トンである。市の人口は20万人である。このため住民一人当りの年間排出量は、ざっと10トン/年となる。

2. 省エネルギー

    さまざまな戦略によって数多くの省エネ対策が可能である。最も重要な対策を次にいくつか紹介する。

2.1 廃熱発電

    電力需要のうち95%が地方自治体省(Stadtwerke)が所有する発電所で発電されている。これらの発電所はすべて廃熱発電(コジェネ)を行い、比較的大きな地区暖房システムに熱を供給している。市の暖房用総需要の約30%がこの地区暖房システムによって賄われている。
    地方自治体省は地区暖房システムの段階的な拡大を図っており、さらに多くの建物が石炭や石油による暖房から地区暖房に移行できるようになる。これによって二酸化炭素排出量がかなり削減できる。だが、新たに地区暖房ラインを敷設するには巨額の資金が必要で、このプログラムの厳密な実施は容易ではない。
    市内には建物の密集度がそれほど高くない地域が数ヵ所ある。そうすると、先に説明した地区暖房システムが経済的になることはまずない。このようなケースでは地方自治体省は、経済的と見られる場合、小規模な、廃熱発電を利用したモーター発電所の建設を行っている。詳細な調査の結果、小規模なユニットが100基で経済的に見合うことが分かった。

2.2 市民、企業、産業界の助言

    二酸化炭素総排出量のうち、かなりの部分は市民が直接の原因となっているため、二酸化炭素削減プログラムにおいて市民の役割は非常に重要である。
    そのため、ザールブリュッケン市はエネルギー情報センターを設けている。このセンターでは暖房や電気に関して、エネルギーの消費量を減らすために市民一人一人が何をできるかを学ぶことができる。“太陽の学校”も組み込まれており、太陽エネルギーその他の利用法を普及させるため、実用的なデモンストレーションが実施されている。
    また省エネ及び消費者が支払う費用を節約するプログラムの開発を図るため、地方自治体省は通商産業界を対象に同様の活動を提供している。

2.3 地方自治体の好例

    学校、スイミングプール、スポーツセンター、事務所といった地方自治体所有の施設では、いかにしてエネルギー、水、費用を節約できるかを示すため、実際にデモンストレーションを行っている(ここで導入されている対策はすべて経済的であるため。)ザールブリュッケン市は1980年から1995年までのあいだに二酸化炭素の排出量を49%削減した。従って、もし戦略的な活動プログラムが実現されるならば、15年間で25%を削減という目標の達成は可能であることを立証しているのである。

3. 再生可能エネルギー

    ザールブリュッケン市は再生可能エネルギーが占める率を、2005年までに暖房では約10%、電気は約1%にすることを目標にしている。この目標に対する理解を深めるためにはザールブリュッケン市の水平面における太陽光放射量が約1.m2.aあたり1kwhであることを知っておくことが肝要である。さまざまな技術が適用される:

3.1 アブソーバー(吸収)システム

    アブソーバーシステムとは屋上に設置するチューブで、たいてい色は黒い。このシステムは非常に安価で屋外温水プールに適している。当市には現在アブソーバーシステムを設置し太陽熱のみ利用する屋外プールが3〜4箇所ある。現在燃料費が安いとは言っても、これはさらに経済的である。太陽光の総使用量はおよそ700MWh/年で、少なくとも70000リットルの石油に相当する。

3.2 家庭用温水のための集熱システム

    このシステムはさほど経済的ではない。今までの設置面積は比較的小規模で約100平方メートルほどである。今後の活動が計画されている。

3.3 光電池

光電池は非常に高価だが、その技術は興味深いものがある。今までに市に220kWp分の設備を設置したが、これは市民一人あたりで考えると約1wp相当である。

    ザールブリュッケン市は1000kw分の発電設備を家屋の屋上に設置するべく計画している。現在、経済的には好条件がそろっている: - 地方政府は設置費用の50%を補助金として提供(7500DM/kwp). - 地方自治体省はグリッドに送られる分55pfg/kWhw(0.35US$/kwh)の55%を負担している。     目標達成のため、このほかにも様々な計画が立てられている。

3.4 風力

    ザールブリュッケン市の平均風速は毎秒2.0m/sである。この数値ではウィンドタービンの稼働は難しい。
    しかし、ザールブリュッケン市は、市の北方約50キロの丘の上で最大発電容量4.2MWのウインドタービン施設に取り組んでいる。

3.5  水力

    ザールブリュッケン市に川は一つしかなく、山も無いため可能性は限られている。     発電容量2MWの水力発電所が現在建設中である。さらに出力400KWの発電所が一基計画されている。

3.6 夏期貯蔵のエネルギーによる暖房

    十分な太陽エネルギーがあるのは夏だが、暖房が必要となるのは冬の間である。夏期の熱量貯蔵とは、夏の間水を暖めて熱を貯蔵し、冬にはその熱を使ってビル暖房をするという方法で、大きな水槽を利用して太陽エネルギー貯蔵することである。

    この新しい技術を使って進められているプロジェクトは、近い将来おそらく実現するだろう。技術的には単純であるが設置コストは高い。しかし、公的資金を得ることによって、実現の可能性が得られることだろう。この技術の潜在的な二酸化炭素削減能力は高い。


3.7 バイオマス

    いろいろな種類のバイオマスの使用が可能である: - 樹木 - 家庭から出る野菜屑 - エネルギー利用のため栽培された特殊な植物

    現在これらすべての技術は研究中で、いくつかは実現している。


4. 結論

    年削減率1〜2%の二酸化炭素削減プロジェクトの実現は容易ではないが可能である。主要な問題は、化石燃料の価格が安く、再生可能なエネルギー利用のために使用される技術が相対的に高価であるという点である。しかし、50年後には石油や天然ガスは稀少で高価なエネルギーとなることに留意せねばならない。今後、エネルギー消費は環境問題のみならず、社会経済的な問題となるだろう。これらの問題を解決する最善の方策はエネルギー消費量を削減し、再生可能なエネルギーを利用することである。


藤沢市バンコク市グル自治体ルイビル・ジェファーソン郡ラトナプラエルサレム市ポートランドラ・セイバ市シェンヤン−瀋陽