取り組み事例

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「自然/みどり分科会」

「ホンジュラス、ラ・セイバ市におけるエコ・ツーリズムの将来性と自然保護について」

ラ・セイバ市長 マルガリータ・ディップ


   &nbsp講演原稿は、NGOメンバーであるホエ・エレーロがラ・セイバ市とともに作成した。

   &nbspラ・セイバ市は、エコ・ツーリズムの開発の分野で計り知れない可能性を秘めた地域に囲まれている。ラ・セイバ市は人口約20万人、ホンジュラスのカリブ海側に位置しており、また、背後には中央アメリカのなかでも最も風光明媚と言われる山脈の一つがそびえている。「シエラ・ノンブレ・デ・ディオス」と呼ばれるこの山脈の劇的な標高によって、海面の高さのマングローブの繁る河口や熱帯広葉樹林から、熱帯樹林、そして標高8,989フィートの高さの雲霧林まで一連の階層化した生態系システムが形成されている。ラ・セイバ市の前には、世界第2の規模の堡礁の一部を形成するベイ諸島が連なり、ここの海洋生態系は世界中の注目を集めている。米国のスミソニアン協会は最近、ラ・セイバ市の東にある珊瑚礁の層でも最も市に近い場所に海洋特別保留地実験所を設置した。(Parque Marino Cayos Cochinos、コチノス島海洋公園)。

環境問題に対する取組み

   &nbspラ・セイバ市は、早急に適切な措置をとればホンジュラスにおけるエコ・ツーリズムのメッカとして成長できるだろうが、農業関連産業とエコ・ツーリズムの発展における持続可能な方法を生み出さなければ、経済の将来性を台無しにしてしまうかもしれない、という岐路に立っている。

   &nbsp1994年、ラ・セイバ市は農業関連産業と市自体の急成長の結果、同市の周辺の水系や動植物の生息地の環境が劣化したことによって、無数の環境問題が累積してしまったことに対応するため、環境問題を扱う部門を初めて設けた。教育や、環境問題に対する認識の不足は、環境よりも日々の生活に必要な基本的なものが優先されるという第三世界の現実とあいまって、市民に国内で最も活発な環境NGOの一つを組織させることとなった。このNGOは1987年以来ホンジュラス政府に働きかけ、ノンブレ・デ・ディオス山脈を中心とする57平方キロメートルをピコ・ボニート国立公園に指定させることに成功した。また、広さ12平方キロメートルの低地熱帯雨林とマングローブ林を守り、エコ・ツーリズムの成長を図るために、レフシオ・クエロ・イ・サラドという野生生物保護区が指定された。

具体的活動例

  1. 1992年以来、ラ・セイバ市は農業経営学と熱帯研究のための教育センター(CATIE)と共同で、農業産業に水を供給し、エコツーリズムのための水と生物の回廊を構成する周辺の水系を、農業、エコ・ツーリズムの将来のために保護することに努めてきた。
  2. ラ・セイバ市ではまた、30人のパークレンジャー(公園警備員)を採用し、カナダブルードリーフ開発プロジェクトで研修を受けさせ、分水界や森林の保護に当たらせている。
  3. ラ・セイバ市ではまたNGOや国連開発計画と協力して、川砂利や砂の採取を規制する管理計画を策定し、観光客やスポーツ愛好家たちを惹きつける川を破壊せずに、建設産業に十分に砂利や砂を供給できるようにした。
  4. ラ・セイバ市は、1993年に制定された環境法の適用を始め、農業関連産業による汚染を抑制するための交渉や指導を開始した。
  5. USAIDからの支援を受けて、水処理施設と関連インフラが、1997年の半ばまでに稼動が可能となる。
  6. ラ・セイバ市のごみ処理問題は、焼却から埋め立てへと考え方を転換し、焼却とそれにともなう大気汚染を抑制することによって改善した。ゴミの焼却を防ぐために古い処分場は監視されており、また、必要な基準に適合した新しい処分場が選定された。国際的な資金調達が必要となるであろう。

   &nbspラ・セイバ市は、生態系と経済が密接な相互依存関係にあることを認識するための岐路にたっている都市の典型的な例である。農業関連産業に灌漑用水を供給している川は、同時に、新しく生まれたばかりで将来の発展が期待されるエコ・ツーリズム産業が活用できるようにもしなければならない。自治体が、ずっと将来まで、幅広い範囲にわたる持続可能性を実現するための意思決定をしていかない限り、一方の産業からがもたらす汚染が別の産業の将来を台無しにしてしまうかもしれない。

   &nbspラ・セイバ市が積極的な支援を行っている野生生物保護区、クエロ・イ・サラドはラ・セイバ市から33キロの場所にあり、ホンジュラスのカリブ海沿岸に位置している。面積は13,250ヘクタールで、クエロ・サラドとサン・フアンの2つの川が形成した細い水路や入り江から成っている。この地域は、重要な海水及び淡水の湿原地帯を含み、マナティーや猿、200種を超える鳥たちが生息しているため、1988年に国立野生生物保護区に指定された。クエロ・イ・サラド財団(FUCSA)というNGOが管理している。

   &nbspこの野生生物保護区内には約84家族が住んでおり、主に、農業、漁業、ココナツ採取などで生計を立てている。彼らは湿原地帯でとれる魚、かに、えび、野生の果物、野生動物などを食料にしている。彼らは、湿原地帯に生えている「バリロ」という木を使って家を建て、屋根は植物を使って葺いている。

   &nbspクエロ・イ・サラド財団で働く人の数はすでに21人を超えており、1997年のはじめにボートやカヌーをさらに増やす計画である。財団は、また、ガイドを4人、パークレンジャーを4人新たに雇う計画である。

   &nbsp保護区内では、約35種類の哺乳動物が保護されている。IUCNからの資金援助を受けて、ホンジュラス国立自治大学の生物学者が現在マナティの個体数調査を行っている。調査の途中ではあるが、保護区内でのマナティの狩猟が禁止されてから、個体数が相当増えていることが明らかになっている。

   &nbsp保護区には鳥類がたいへん多く、ホンジュラス全土で見られる鳥類の内、28%、198種がこの保護区内で見られる。また渡り鳥たちの休息地にもなっている。

   &nbspノンブレ・デ・ディオス山脈から発する川は15本あり、なかでも特にピコ・ボニト国立公園の川がこの保護区に大きな影響を与えている。これらの河川流域の保護は牧畜や農業に起因する有要な要因、つまり森林伐採や公害、堆積、急激な土壌の侵食などの影響を受けやすい。

   &nbspクロエ・イ・サラド財団は、国連開発計画、USAID、ホンジュラス観光協会(IHT)の資金援助を得て、国家レベルとしては革新的な試験的プログラムを実施している。これが、我が国の他の保護地域におけるエコ・ツーリズムの発展のモデルケースとなることが望まれている。このプログラムは、保護区におけるエコ・ツーリズムを発展させ、そこに住む人々が何を必要としているかを知るために、生物学的・生態学的・社会経済的研究と市場調査を進めている。

   &nbspエコ・ツーリズムの可能性を示すために旅行者の流入に関する若干の統計を挙げると、1994年には、1500人が保護区を訪れた・・・・・・・・1996年には、倍増して3000人が訪れた。

   &nbspラ・セイバ市はまた、市に隣接しているホンジュラス最大の国立公園(Fupnapib-Fundacion Parque Nacional Pico Bonito)の保護に努めている別の環境NGOの活動も支援している。エコ・ツーリズムは、計り知れない発展の可能性を秘めており、エコツーリストの数も増え始めている。1997年のエコ・ツーリストの数は、7,500人を超えると予想しており、旅行者を受け入れるための数棟の山荘が完成する予定である。

   &nbspピコ・ボニートとはスペイン語で美しい峰という意味であるが、このピコ・ボニート国立公園はホンジュラスの北側の海岸沿いにあり、ほとんど人間が住まず、手付かずの熱帯雨林の自然が保たれている地域である。この国立公園は、ホンジュラスで最も高く、最も険しい峰、ピコ・ボニートに因んで名づけられた、ホンジュラス最大の国立公園である。まだ人間が足を踏み入れていない中心部(核エリア)だけで50平方キロの広さがある。ピコ・ボニート国立公園は沿岸都市ラ・セイバの南南西に位置し、同市から簡単に訪れることができる。

   &nbsp自然のままの熱帯雨林のある急勾配の山々が、カリブ海岸にそそり立っている。(標高100メートル)。海抜が全体的に高いこと、公園が広いこと、自然のままの広い地域があること。樹齢の古い森林があることによって、ここには非常に多種な野生動物が存在する。北部の低地にある熱帯雨林は、標高が高くなるに従って「雲霧林」に変り、ジャガー、オセロット、マーゲー、オオギワシ、クモザル、イグアナ、ケツァール、ホエザルなど、絶滅の危機に貧している動物たちが数多く生息している。

   &nbspラ・セイバ市は、増加している同地域への旅行者を案内するためのエコツーリズムガイドと、ホテル従業員となる若い男女の研修を行っている3つの機関を支援している。

   &nbsp我々は、ラ・セイバ市の将来にとって、最も重要な経済活動は、エコ・ツーリズムであると考えている。エコ・ツーリズムは、雇用を創出し、貧しい人々にまずまずの収入をもたらし、外貨をもたらし、市民たちに自然資源保護の動機を与える。市民たちは、そうすることが、自分たちの基本的で差し迫った必要を満たす所得を生み出さない限り、自然資源を守ろうとはしない。自然保護区は、外国人環のエコーツーシルトにとって天国となりつつある。ホンジュラスの農民が、オウムやオオハシが沢山とまっている熱帯樹木を薪として切り倒すよりは、日本人観光客に見せる方が長期的に見てより多額の収入につながる道だと認識した時に、ホンジュラスの未来はより良いものとなろう。ホンジュラス国民は、旅行者が手つかずの自然の美しさを見るために、その地方の住民に雇用をもたらすことから、森林は保護区とすることによって、その価値が高まるということを認識するであろう。

   &nbspその結果、我々はホンジュラスの分水界を汚染から守り、人々の飲料水や、穀物の栽培地の灌漑用水、水力発電用水、そして、エコ・ツーリストを惹きつけ、いつの日か人類全てに恩恵をもたらす重要な医薬品の原料となりうる天然の物質の源である生物学的回廊を確保できることになる。

   &nbsp以上をまとめれば、我々が持っている自然資源や自然の美には大変大きな可能性が秘められている、ということになろう。ラ・セイバ市は、近くに世界一素晴らしいスキューバダイビング海域があるという、地理的に希少な条件に恵まれている。また、イカダ乗り(ラフティング)やカヤッキングを楽しめる激流や急流の多い美しい川もある(ラ・セイバ市から数分の距離)。5社が営業を開始しており、ラ・セイバ市は国際的に有名なスポーツを楽しむための場所となりつつある。

   &nbspごく近くにこれだけ多種多様な魅力を揃えた都市が世界中に他にあるだろうか?

   &nbspラ・セイバ市に、カリブ海の海岸に、美しい緑に恵まれた高い山々を是非訪れて頂きたい。

   &nbsp心からのもてなしと美しい熱帯の自然に満足なさることだろう。

   &nbspご静聴感謝します。


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