取り組み事例

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「ごみ/リサイクル分科会」

「ラトナプラにおける固体廃棄物管理」

ラトナプラ市長 カジ・サナス・アベイラトネ


序文

    スリランカはインド洋に浮かぶ熱帯の島だ。素晴らしい景観、古代から脈打つ文化、そしてこの一帯で最も生物多様性に溢れた国である。この土地は古くから名を馳せており、貴重な石やスパイス、ゾウ、そして素晴らしい景観についての話はギリシャ、ローマ、アラブ、中国の物語で伝えられている。

    スリランカは熱帯に位置しているため、年間を通じて気温が高く、雨は中央部の山岳地方から始まる放射状の川に流れ込む。地表水の大部分は灌漑と水力発電に利用されている。

    ここではスリランカ、サバラガムワ州の主要都市の一つであるラトナプラにおける固体廃棄物管理の現状について説明する。


1. スリランカにおける都市化と社会の変化

1.1 都市化

    スリランカは環境的に見て岐路に差し掛かっている。開発途上国の主要都市の多くと違い、スリランカではまだ経済的に実現性のある手段によって環境悪化を制御することが可能とされている。急激な経済成長と都市化は拡大しつつある都市・工業地帯の環境の悪化をもたらしてきた。

    新興工業国としての地位獲得に向けたスリランカ政府の取り組みは一部で成長に伴うマイナス結果をもたらしている。是正措置の実施は資金面から考えると実現性が薄いということもあり、一つ間違えれば経済的に逆効果というところまできている。これが最も顕著に現れているのが公害だ。成長率の増加と開発形態の急激な拡大は自然が持つ同化能力を急速に超過しているということが明白になっている。

    家庭、工業、農業を発生源とするスリランカの水質汚染は全島で起きている。問題が拡大しているのにもかかわらず水質汚染が健康に与える影響については充分なデータがない。地下水は灌漑用・家庭用としてその重要性を増してきている。都市部からの排出や農薬によって井戸の汚染も地方や都市部で悪化している。

1.2 社会の変化

    歴史的に見ると、スリランカは亜大陸の近くにあるため、文化、宗教、言語、政治面でインドの影響を受けてきた。

    スリランカは世界で最も貧しく、最も人口密度の高い国の一つである。1971-77年のGNP成長率は年間2.9%となっている。1978-86年には経済の自由化に伴い、新規の海外からの援助・投資も相当あり、年間成長率は5.6%に増加。 1987-1989年は内乱のため2.2%に急落した。国内の動乱によって一番大きな被害を受けたのが観光産業だった。森林伐採、土地の劣化、土壌浸食、公害などの環境に対する圧力が都市化問題に新たな広がりをもたらしている。

1.3 政策と制度

1978年のスリランカ憲法は国内の環境と自然資源の保護・保全を明記している。
1981年には自然環境法が制定された。
1982年、中央環境局(CEM)の設立。
1988年、CEAの施行権限を強化。
1990年、閣僚レベルの環境省が設置された。
1991年、スリランカ政府は国家環境行動計画を発表
1993年、官報に記載された開発プロジェクトまたは指定のプロジェクトの環境影響評価が義務づけられる

2. 固体廃棄物管理の重要性

    ラトナプラで排出される固体廃棄物に関して組織的かつ総合的な廃棄物回収・処理を行う。

    スリランカの実情に適したやり方で、近代的な方法で最もよいものを使い、限られた資源内で廃棄物回収・処理サービスを提供する。


2.1 総合的な情報

 市の面積 2,174 ha
 道路総延長 550 km
 家庭の庭・農地 土地の総面積の73.3%
 住宅地開発 14.8%
 商業地等 11.9%
 年間平均気温 27.2゚C
 年間平均降雨量 3990 mm
 平均固体廃棄物排出量  一日134 m3
 1995年のラトナプラ市の人口  52,716

2.2 廃棄物回収のデータ

 セクションの数 12
 収集車の数 16
 作業員総数 103

3. 現在の回収方法

3.1 清掃の方法

    町の中心部は一日2回清掃される。

    一般住宅地は一日1回収集、その他の地域は週に2―3回

    病院から出る廃棄物は一日に2回収集される。

3.2 作業員

    市の衛生部がラトナプラ市の清掃業務を管理している。市の組織内には2人の公衆衛生検査官(Public Health Inspector = PHI)がおり、2人とも業務管理を担当している。作業員の数と配置は以下の通り:

    公衆衛生検査官 2人
 常任監督−2人 1シフトにつき1人、ポーラ地区
 4輪トラクター−2台 作業員−8人
 トラクター1台につき、4leb, 二交代シフト
 常任監督−1人

排水溝の掃除
 作業員 14人
 臨時監督−12人
 監督1人に1地区、4―5人の作業員
 道路清掃作業員 56人

3.3 収集制度

    清掃業務においては市全体は12のセクションに分けられ、作業員は割り当てられた特定のルートを通って道路を掃いて清掃し、道路に落ちているゴミを集め、ある程度づつ積み上げてまとめる。掃いて集められたゴミは空き地か道路脇で処理する。トラクタートレーラは3時間かけてゴミを収集し、一時間かけてそれを処理場に運んで市に戻ってくる。

    ポーラ地区の毎日の清掃作業には2人の監督と作業員が充てられている。ゴミは臨時収集地点に捨てられる。

3.4 処理のネットワーク

    ゴミは排出源である家庭である程度分別される。ビンと新聞紙は家庭を回る業者が買い取る。空のプラスチック容器やカンも業者が別に収集する。乾季には道路清掃作業員は落ち葉を道路わきで燃やして処分する。ゴミの焼却は処理場でも行われる。

    現在市が利用している処理場は市庁舎から3.5キロ離れている。土地の一部は病院で引き取り手のない遺体の埋葬に使われている。市によって収集された浄化槽からの汚水も処理場に掘られた穴で処理されている。

3.5 影響

    市では現在、衛生埋立法は実施していない。ゴミは非常に急な斜面がある土地に廃棄されているため、ゴミの上に何かをかけるというのは実行不可能だ。ポーラ地区近郊の橋のわきにもう一つゴミ捨て場があるが、川岸に位置しているため川の汚染が問題となっている。

3.6 制約

    市は都市部から収集したゴミを堆肥化する試みは実施したことがない。ゴミ処理においては以下の方法を検討する必要がある。

    埋立て−もっとも実行性の高い方法を見つける

    焼却−ゴミの性質からして除外される

    再資源化−民間業者を奨励


4. 固体廃棄物管理を向上させ公害を抑制するための施策案

    ゴミの相当部分が野菜市場からバイオマス廃棄物の形で収集されている。このゴミは埋め立てると浸出液を出すため、埋め立て地の環境を汚染し、地下水にまで到達する可能性がある。

    野菜市場からのゴミやその他の有機質のゴミを堆肥化することによって浸出液の量と埋め立てられるゴミの量をかなり減らすことができ、環境的には一石二鳥となる。

以下の土木作業が提案されている。

  1. 病院の土地の一部を堆肥作業に利用し、頑丈なスタンドを用意する。浸出液を処理するため地面に4つの穴を掘る。
  2. 幅4メートルの割り石を敷いたアスファルト道路を外環道路の現在の入口から堆肥場まで建設する。道路ぞいに排水溝を作り、雨水が堆肥場に流れていかないようにする。
  3. 堆肥場の入口に納屋を建設し、熟成のためカバーがかけられた堆肥を保管する。
  4. 洪水の際に水が処分場に侵入するのを防ぐため、処分場の東北・南東の境界に土の堤防を築く。堤防の高さは洪水の最高レベルである0.3mで維持する。
  5. 堆肥熟成場の隣に事務所/店舗を建設する。
  6. 医療用廃棄物を処理する場所を用意する。廃棄物をその場所に運ぶため、幅3mの道路を建設する。
  7. 鉄条網のフェンスを設置する。中に入る道路から堆肥場までのあいだに幅4mのゲートを設置する。幅4mのゲート2つを医療用廃棄物処理場用地と埋め立て用地の入口にそれぞれ設置する。
  8. 処理場の排水を改善し、雨水等は処理場の外に流れるようにして停滞する浸出液の量を減らす。処理場で露出している粘土質の表土の上に300mmの厚い砂の層を敷き詰め、処理場の排水を改善させる。浸出液を回収・処理するため配管を工夫する。西側の境界にそって開放型の石の排水溝を設置して、雨水がたまらないようにする。
  9. 処理場に流れ込む排水を中心道路の排水溝に流すため、直径600mmの配水管を固められた土の堤防の上に設置する。
  10. 景観改善のため特定の種類の木を約120本植える。

        効率的な固体廃棄物管理によって公共衛生と環境が改善される。改善点は

    • 回収される固体廃棄物の排出量が現在の43%から75%に増加する
    • ハエやカのわく場所が減る
    • 水質が原因の病気が減る
    • 医療費の削減
    • 地下水汚染の可能性の減少と地表水の流れ込み防止
    • 新処理場は勧告された方法で設置・運営されればあと少なくとも6.35年は使用できる
    • 固体廃棄物の適切・適時の回収
    • 商業的な堆肥生産
    • カバーをかけることによって風で飛ばされるゴミが減る
    • 悪臭の減少・景観の改善
    • 既存の処理場は必要なくなるため、それらが抱えていた環境問題が排除される

    固体廃棄物管理小プロジェクトには2つの要素がある。中央政府から助成金といったかたちで提供される新処理場の開発に加え、回収設備、廃棄物を運ぶローダー、ゴミにかぶせる材料など処理場を適切に運営するためにあらたに必要となる設備の調達がある。農場用トラクター2台、新しいトレーラー(トラクター用)5台、25台の手押し車、そしてバックホー付きのフロントエンドローダーが購入された。市は費用の20%を支払い、40%を貸り、残りの40%が中央政府によって助成される。

    堆肥化作業は民営化されるため、市の業務ではなく民間業者によって行われる。堆肥を販売によって充分な収入を得ることができ、市の堆肥化関連コストが増加することはないと見られている。

    処分場の整備費用はUS$170,000、設備費用はUS$110,000程度となっている。

    ラトナプラは環境を大幅に改善してくれる施設を得ることになり、また同時に収集対象地域を拡大することができ、嬉しく思っている。



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