グローバルネット(月刊環境情報誌)
フロント―話題と人(2015年10月/299号)
「海の生態系を守り、食卓にのぼるおいしい魚を残したい」
持続可能な水産資源のためのコンサルティング会社を設立
花岡 和佳男 さん
(株式会社シーフードレガシー 代表取締役)
今年7月に設立した「シーフードレガシー」は、水産資源を次世代に残す(レガシー:遺産)という究極目標がその社名の由来だ。キックオフイベントして来月、シンポジウム「魚から考える日本の挑戦」を企画、欧米の小売業者や外食企業を招き、水産物の持続可能な調達に関する先進的な取り組みを紹介してもらう。
花岡さんは3歳から父親の仕事の都合で、マレーシアとシンガポールで育った。高校卒業後渡米し、フロリダの大学で海洋環境学・海洋生物学を専攻した。毎週末ダイビングに通ったマレーシアの海が開発などのために破壊されていくのを目の当たりにしたのが花岡さんのその後の活動の原点だ。
大学卒業後は「故郷」の一つでもあるマレーシアに戻り、マングローブを伐採しないでエビを養殖する施設を自ら立ち上げた。しかし、エビの最大の消費地が日本であると知り、「生産地の環境を守るには消費国で活動しなければ」と2007年に帰国した。
活動先として選んだのは国際環境保護団体「グリーンピース」。海洋生態系問題担当として、海洋保護区や過剰漁業などに関する調査や講演など多岐にわたる活動を展開。福島の原発事故後の2012年には、国内の大手スーパーに対し店頭に並ぶ魚の放射性物質含有量を抜き打ち調査、さらに魚の放射能汚染に対する取り組みについてアンケート調査し、商品調達と情報公開などに関する企業ランキングを発表し話題となった。消費者の環境リスクの回避・軽減と被災地の漁業再開の支援を目的としたこのキャンペーンは、「過激な反捕鯨団体」というグリーンピースの日本でのイメージを大きく変えた。しかし、「市場や企業とのつながりを大切にしながら背後で調整役となりたい」と昨年末、退職した。
世界の水産資源は乱獲と無秩序な取引により生態系の破壊が深刻だ。新会社では日本の企業や小売業者、国内外のNGOなどと連携し、日本のマーケットさらには行政を動かしたいという。これまでの活動や数多くの国際会議に参加した経験で蓄えた知識と国内外に広がる豊富なネットワークを生かし、日本の魚文化の中心、東京・築地に構えた事務所から世界の漁業の持続可能性に挑む。38歳。 (絵)
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