グローバルネット(月刊環境情報誌)
フロント―話題と人(2015年9月/298号)
レイシー法を活用して消費国からの違法伐採対策に力を入れる米国
トーマス・スウィーゲルさん
(米国司法省 環境天然資源局法政策部 主席弁護士)
スウィーゲルさんはハーバード・ロー・スクールを卒業後、民間で数年経験を積んですぐに米国司法省に入省。以来25年間ずっと環境や天然資源法令の違反事件を担当、環境破壊に手を染める企業と闘ってきた。今回は、違法な野生生物の取引を取り締まるレイシー法担当者として、セミナー「世界の違法伐採対策と日本の取組」で講演するために来日した。このセミナーは当フォーラムなどが8月に主催したもので、国会議員や木材関係企業担当者など合わせて80人が参加した。
スウィーゲルさんは、「違法伐採は生産国である途上国だけの問題ではない。気候変動や生物多様性とも関連する、先進国も含めた地球規模の問題だ」と消費国による取り組みの必然性を強調した。さらに、日本ではコストが増えるなどの理由から規制的な手法を導入することに反対する事業者も多いが、「企業にこれまでのやり方を変えさせるには、罰則などによる強制力が必要。レイシー法での違法木材での執行事例はそれほど多くないが、禁止木材の違法輸入により30万ドルの罰金支払いを命じられたギターメーカーのギブソン社のようになりたくないと自らのサプライチェーンを見直す事例がある」とレイシー法の効果を語った。
世界の違法伐採を食い止めるための対策として、消費国側の取り組みの重要性が高まっている。2008年に米国でレイシー法改定、2013年の欧州連合(EU)では木材規則、2014年の豪州では違法伐採禁止法が次々と施行されている。いずれの国の制度でも、生産国などの法律に基づいて違法とされる木材を自国・地域内に持ち込むことを禁止し、民間事業者に対してデュー・デリジェンスと呼ばれる合法性に関する念入りな確認手続きを義務付け、さらに違反行為には罰則が盛り込まれている。これらに対して、日本の制度は対象が政府調達のみに限られ、罰則もないため強制力に欠けるものとなっており、世界有数の木材輸入国である日本に対して欧米豪と同様の仕組みを導入すべきだという声が日本の国内外から高まっている。
スウィーゲルさんは、「日本も米国などに加わって消費国による法規制導入を検討していることは歓迎だ」と日本への期待を語ってくれた。(希)
(グローバルネット:2015年9月号より)
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