グローバルネット(月刊環境情報誌)
フロント―話題と人(2015年8月/297号)
国産材ギターで被災地復興を!
梶屋 陽介さん
(株式会社セッショナブル 代表取締役)
「国産材を使ったギター作りで被災地の復興に関わりたい」。梶屋さんは、宮城県女川町(おながわちょう)に今年末、エレキギターを作る工房を立ち上げる。
種子島出身で、東京の大手楽器店に勤めていた。エレキの新型モデルを自ら演奏して撮影、動画を共有サイトに投稿、愛好家に注目され、トップレベルの売り上げを誇る腕前だった。
東日本大震災直後から支援に関わった。津波で流失したウクレレを小学校へ贈ったり、ダンス大会の予選を被災地で開き、地元の中高生を東京大会へ送ったり …。何度も通ううちに起業の夢を固めた。「イベントでなく継続的に被災地を支えたい。得意なギターで」。
女川町で官民出資の新たなまちづくりが始まることを知り、須田善明町長に工房の構想を提案するとほぼ即決。「よそ者がいきなり来てギターを作るなんて、警戒されるかと思った」が、地元の商工会もその場で受け入れてくれた。震災の津波で中心部が壊滅した女川町は人口流出が激しい。震災前に約1 万人だった人口は70%に減った。梶屋さんは「ギターの生産で地域に雇用を生み出し、若者が集まる町にしたい」と言う。
工房の建設地は内陸に移転して今年3 月に開業したJR女川駅前。国の支援を受け整備が進む新しい商業施設の一画だ。工房建設に先立ち仙台に移住し、昨年11月、ギター・ベース販売店「GLIDE」を開いた。
目標は数年後に月産200 本。販路は国内より需要の伸びが見込まれるタイなど東南アジアに広げる考えだ。
徹底して日本産にこだわる。北海道のセンやシナ、紀伊半島のヒノキ、被災地南三陸の杉も試す。国産材にこだわるのは「ギターの材料は世界中で枯渇している」から。国産メーカーは、北米や南米の原生林で伐採された加工しやすい原木を使うのが常識だった。工房ではすべて国産の、違法伐採でないことなどを証明するFSC 森林認証を取得した材にしたいと意気込む。
「杉はすっきりした音になる。堅い材質なら音も堅く、柔らかければ、まろやかな音になる」と梶屋さん。使う木材によって音に違いが生まれるという。
各地からサンプルを取り寄せ、試作を進めている。
32 歳。 (K)
(グローバルネット:2015年8月号より)
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