グローバルネット(月刊環境情報誌)
フロント―話題と人(2015年7月/296号)
環境立国デンマークの環境・エネルギーの技術や知恵を日本に伝える
デンマーク大使館上席商務官(環境・エネルギー担当)
田中 いずみさん
2050年までに再生可能エネルギー100%を目指す環境立国デンマーク。風力発電はすでに総発電量の約40%にのぼる(特集参照)。この国の環境やエネルギーの技術を日本に紹介し、両国間のビジネスの橋渡しとなるのが田中さんの任務だ。
田中さんは父親の転勤に伴い、9歳から大学卒業まで米国で育った。高校生の頃、環境規制を逃れて隣国に移転するドイツの工場をテーマにしたドキュメンタリー番組を見て環境問題に興味を持ち、大学進学後は環境科学政策マネジメントを専攻した。
卒業後帰国し、大手電機メーカーに就職したが、「日常的に英語を使う仕事がしたい」とスウェーデン大使館に転職。日本の環境エネルギー政策の分析などに携わった。
そして昨年、デンマーク大使館に再転職。以来、デンマークの環境・エネルギー技術を日本の企業や自治体に紹介することに奔走している。最近は特に農業廃棄物・副産物を利用したバイオマスエネルギーの紹介に力を入れている。
デンマークの環境技術に対する日本の企業や自治体の関心は高い。その日本の市場にデンマーク企業が目を向け、日本の実情に合ったやり方で技術を導入できるよう働きかけていくのが田中さんの目下の課題だ。
田中さんは「デンマークの農業政策におけるバイオマスエネルギーの活用は大いに参考になる」と言う。国の積極的なエネルギー政策と環境教育によって培われた国民の高い環境意識。技術だけではなく、2050年までに化石燃料から完全に脱却するという大きなゴールを目指す国の姿から日本が学ぶべき点は多い。
「何にでも興味を持つタイプ」だという田中さんは、大学生の頃は日系人向け福祉施設でのボランティアや自治体の環境団体でのインターンを経験した。米国の小学校のバンドで始めたフルートとサクソホンは、今でもバンドを三つも掛け持ちして続けている。
国連の調査で「世界で最も幸福な国」とされたデンマークに関わる田中さんは、幸福の前提となる持続可能な社会のためのデンマークの知恵を日本に伝えようとしている。 (絵)
(グローバルネット:2015年7月号より)
■緑のgoo グローバルコラムで特集記事が紹介されています。