世界の森林と持続可能な森林管理
REDDのためのFPICガイドライン作成プロジェクト
インドネシア・スラウェシ |
森林減少及び土地利用の変化に伴う温室効果ガス排出量は全体の2割とされており、途上国における森林の減少・劣化を防ぐことが地球温暖化防止上も重要となっています。そこで、気候変動緩和策にもなる、新たな森林保全・管理の仕組みとして注目されているのがREDD+です。
気候変動緩和策としてのREDD+への期待が高まる一方で、REDD+が森林に生計手段等を依存して暮らす先住民族や地域コミュニティに負の影響を与えることが懸念されています。たとえば、REDD+プロジェクト対象地域から、地域コミュニティが排除され、彼らの森林利用が制限・禁止されたりするのではないかという声が先住民族等から挙げられる事例も少なくありません。このような声を反映して、気候変動枠組条約では、REDD+実施には地域社会や森林生態系への負の影響を防ぐための手立てとしてセーフガード対策があわせて実施されなくてはならないことが合意されています。そして、セーフガード実施のための手引きやガイドブックが次々と出され始めています。
数多く出されているこれらの情報を整理しつつ、特に森林開発・保全の現場で起きている社会的課題に注目してもらおうということで始めたのが「途上国の森林保全に寄与する社会セーフガードに関するガイドラインの作成・試行・普及プロジェクト」です。REDD+に関心を持つ日本の援助機関や民間企業等を対象に、先住民族や地域コミュニティから自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意=FPICを得ていくためのガイドラインを提供することをねらいとしています。
本ガイドラインの特色は、プロジェクトベースのREDD+事業向けに、FPIC実施の手順を時系列に示したことにあります。2013年8月時点では第1版で、今後、国内外の専門家や関係者からのご意見等をいただき、2014年度初めに最終版を完成させ、さらに日本語版だけでなく英語版等の作成も計画しています。
◇お知らせ◇
FPICガイドラインver.1の公表とコメント募集の開始
●実施内容(予定含む)
1年目(2012年度)
@社会セーフガードに関する既存のガイドライン・基準等の分析とFPICガイドライン案の作成
Aガイドライン案を精査するための予備テスト・調査の実施
2年目(2013年度)
@ガイドラインver.1の公表と社会セーフガード及びFPICに関する普及啓発活動
AFPICガイドラインver.1の精査・確認のための現地調査
BFPICガイドラインver.1の精査・確認のための国内外専門家等によるレビュー
3年目(2014年度)
@FPICガイドライン最終版の発表
AFPICガイドライン最終版の翻訳(英語、サイト国で使用されている言語)
BFPICガイドライン最終版の普及と現地へのフィードバック
●期待される成果
・ガイドラインは、広く日本企業・組織の社会セーフガードに対する関心を喚起するものとなり得る。加えて、日本企業・組織が関与するREDD+プロジェクトが、地域コミュニティに与える影響に関して、負の影響を未然に防ぎ、プロジェクトの円滑な運営に寄与することが期待される。
・ガイドラインを日本語のみならず、英語及びサイト国の言語への翻訳を行うことにより、テストを実施したサイトの現地の関係者(地域コミュニティ、現地のプロジェクトパートナー、地方政府等)にガイドラインの内容が認識され、社会セーフガードの考え方が、広く認知されることが期待される。
・地域住民の権利尊重とREDD+への参加がガイドラインの普及によって促進されることにより、REDD+プロジェクトが森林保全と温暖化の緩和を確実に達成する可能性が高まり、ひいてはその成功が日本からの国際貢献となることが期待される。
●実施主体
一般財団法人 地球・人間環境フォーラム、
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
●助成
環境再生保全機構地球環境基金(平成24年度、平成25年度)
※本件に関する英語での情報はこちら (This information is also available in English)