フォーラム随想2R実行の日常生活
2025年04月17日グローバルネット2025年4月号
地球・人間環境フォーラム理事長
炭谷 茂(すみたに しげる)
私の日常生活の行為では3Rのうちリサイクルは、あまりないので、実行しているのは、リデュースとリユースの2Rである。
幼い頃から貧乏生活に慣れてきたので、質素な生活が性に合っている。私のライフスタイルは、リデュースそのものといえる。
宴会などで食べきれないほどの料理がテーブルに並ぶと、もったいないというよりも悲しくなる。料理を出す側は、最大限のサービスのつもりだが、食べる私は、食べきらなくてはと負担に感じる。
韓国では食べきれないほどの料理が出されることがある。料理をすべて食べると、接待する方は料理が少なかったのかと気にするという話を聞いた。だから少々残す方がマナーだと諭された。昨年11月に韓国に出張した際は、これを忠実に実行したが、同行した他の日本人は、気にしていなかった。
私の故郷の富山県では結婚式のお客への引き出物は、片手では持てないくらいの量のものが用意される。大きな鯛の焼き物、赤い紅をたっぷり使用した鯛模様のかまぼこ、果物、お菓子、缶詰など盛りだくさんである。車を利用する人はいいが、遠路電車で出席した人は大変である。生ものが含まれているので、駅のごみ入れに投げ捨てられているのを発見することがある。
思い出せば、私の結婚式は簡素そのものだった。予約をしたのは3ヵ月前で、平日の空いている時間帯だった。私の父と妻との初対面が、結婚式当日だったから本当にバタバタの式だった。料理は、「リーズナブル」なもので、引き出物は小さな食器一つ。当時は安月給の身だったから、妻も含めて誰もが納得した。
私は、このような簡素な結婚式が心地良かったし、今でも誇りに思っている。
その後結婚式に出席する機会があったが、芸能人の結婚式のように豪華なものばかりである。そんなに金をかけても、離婚するカップルが増えているから、最も大切なことが伴っていないと言いたくなる。
本については、昔は家に収まりきれないくらいにたくさん買った。自宅には収まらないので、2ヵ所ある職場の事務室に運び込んでいる。
でも今は本を買わないようになった。毎月、論文執筆を行うが、必要とする文献は数十冊に及ぶ。1割くらいは所持しているが、あとは図書館を利用する。経済面の負担の軽減にもなるが、必要となる部分は一冊の本の中でせいぜい10%もない。そこを参照し、コピーを取れば十分だからである。
最近はネットで統計や白書などが簡単に見られるので、大変重宝している。これも本のリデュースに貢献している。
現在実行していることは、昔読んだ本の再読である。法律、社会学、精神医学、哲学、語学などであるが、ほとんど忘れている。再読すると、新たな学びになる。「こんな難解な本を読んでいたのか」と自分を褒めたくなる。これはリユースに該当するのだろうか。
確かに学問の進歩が激しく、50年前の本は知識の面では役立たない。でも昔の本は、体系や論理が堅固で、文章は、流麗で明快であるので、得るものは大きい。
すっかり忘れていたと思っても、読み返し読んでいるうちにその時代のことを思い出す。自分の過去を振り返らせる。本のリユースにはこんな効用もあるようだ。
衣類のリユースも試みる。昔のネクタイを取り出して「もったいないから」と使うことがある。たいがい現在のものよりも幅が広い。妻は、「みっともないから、よしなさい」と忠告するが、質素な生活を信条とする私は、格好にこだわっておれない。
最近ネクタイを着用する人が少なくなった。着用していても個性的になった。昔のネクタイも今ではおしゃれになる。これもリユースの効用だろうか。
2R生活は、乙なものである。