フロント/話題と人堀之内 来夏さん(立命館大学三年生)、林 菜々子さん(広島大学一年生)

2025年02月14日グローバルネット2025年2月号

「社会が変わるきっかけに」~日本初の若者気候訴訟~

(左)堀之内 来夏(ほりのうち こなつ)さん(立命館大学三年生)
(右)林 菜々子(はやし ななこ)さん(広島大学一年生)

記録的な猛暑が各地で相次いだ昨年8月。国内の大手火力発電事業者10社を相手取り、日本初の若者による気候変動訴訟が名古屋地方裁判所に提起された。原告団は、北海道から九州に暮らす15~29歳の16人。IPCC第6次評価報告書では、電力部門は太陽光や風力による大幅な排出削減が可能とされ、G7(先進国首脳会議)でも石炭火力発電は2030年代前半にフェーズアウトすることが合意されている。日本全体のCO2排出のうち発電部門が占める割合は4割で被告10社だけで3割に上る。訴訟は、国際合意である1.5℃目標に整合する排出削減の実行を10社に対し求めるものだ。

民主的な運営を重視する原告チームでは、常に全員での合意形成を行っており、口頭弁論での陳述や取材の対応も誰か一人に偏ることが無いように分担している。今回インタビューに対応してくれた堀之内さんと林さんは、自然や生き物に親しんで育った幼少期やどれだけ抗議しても政府や企業が変わらなかった経験(林さん)、米国で高校に通い、社会問題に活発に取り組む学生に感心しながら自らは動けなかった過去(堀之内さん)などを語ってくれた。欧米などでは、若者が社会問題に対して積極的に行動し、すでに同様の訴訟も起こしている。対照的に環境活動への関心もまだまだ低く偏見もある日本の現状を「変えるきっかけにしたい」との思いで、二人は訴訟に参加している。

普段の活動では、原告と弁護団が情報共有する月一回の全体会議に加えて、SNS広報チームやイベントの企画を担うチームに分かれ、アイデアを出し合っている。「今後はどんな人が原告になっているかを知ってもらい、同世代の人が共感できるような発信をしたい」と堀之内さん。林さんも「訴訟を起こすことで報道が増えて、同世代や社会の意識が変わり、気候変動への関心が高まれば」と活動の進展に望みをかける。

2月18日に第2回口頭弁論が、3月8日には、韓国や台湾で同様の若者による訴訟に携わった原告・弁護団と、経験や課題を共有し、今後の連携を議論する国際シンポジウムが開かれる。海外の同世代とも連携し奮闘する若者の訴えを、全世代の日本人で受け止めて自分事化し、支えていきたいと感じた。(克)

 

3/8(土)開催の国際シンポジウム「気候訴訟で社会を変える—動き出した東アジアの若者たち—」の詳細(趣旨、プログラム)はこちら

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