フロント/話題と人 岩崎 祐さん(映像作家)

2024年12月16日グローバルネット2024年12月号

自身初の長編環境ドキュメンタリーを制作
~日本の若者の環境活動を追いかけて~

岩崎 祐(いわさき ゆう)さん
映像作家

宮城県で若者の気候運動Fridays for Futureに参加する学生を、2年間にわたり追いかけた長編作品「みちのく電記」が今年7月に完成した。「未知の国」と当て字されることもある「みちのく」には、周縁・不可視化され豊かな国の社会・環境的代償を払ってきた「グローバルサウス」の存在が重ねられている。

制作のきっかけは、2021年に宮城県角田市のパーム油発電所についての記事を読んだこと。事業者はSDGsへの貢献をうたうが、実際にはアブラヤシ農園造成のための熱帯林開発に拍車が掛かることになる。問題に興味を持って調べていたところ、知り合いを通じて、地元で活動する学生の鴫原宏一朗さんに出会った。

作品では鴫原さんと県内の石炭火力、パーム油、バイオマス、メガソーラー発電所の反対運動の現場を訪問したり、鴫原さんが仲間と一緒に参加した2022年の気候変動枠組条約締約国会議にもエジプトまで同行した。日本政府・企業が関与する海外の化石燃料事業に対して「グローバルサウス」の同世代と連携する姿や、内外の抗議が政府のバングラデシュ・マタバリ石炭火力発電事業の支援中止につながった流れ等が映される。一方、鴫原さんがエネルギー貧困対策やフードバンク等の地域課題に取り組む一面にもカメラが向けられ、地域と世界、両方の課題を見据えて持続可能な社会を目指す思いが伝わってくる。岩崎さんは「映像作家としてさまざまな活動や出来事に文脈を与えて、ストーリーにすることができた」と、今までで一番編集に時間をかけたという本作を振り返る。

アメリカの大学を卒業した岩崎さんは、日本の番組制作会社やケーブルテレビ局を経て、東日本大震災後の2年間は東北の復興活動を映像で記録するNPOにも携わった。その後、エチオピア人難民申請者や旧ユーゴ出身の無国籍者など、東京で暮らす外国人の生活を中心に撮ってきたが、「日本での出来事や人を、世界を意識して考え、ストーリーにしたい」という思いは本作にも通じている。2年間の鴫原さんの成長と自身の環境問題の理解が深まる過程が重なった本作には思い入れが深く、「自主上映を通していろんな人に見てもらい、草の根で広げていきたい」と語る。(克)

 

「みちのく電記」は12/21(土)に東京・入谷で開催されるイベント「世界を配給する人々 vol.02 〜わたしが開かれたとき〜」で上映されます。https://peatix.com/event/4188185

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