環境ジャーナリストからのメッセージ~日本環境ジャーナリストの会のページ整理記者から見た環境・農業問題

2024年10月17日グローバルネット2024年10月号

日本農業新聞 編集デザイン部
林 美穂(はやし みほ)

「見出し」に悩む整理記者

私は日本農業新聞で、整理記者をしている。ご存じの方には恐縮だが、整理記者とは、取材を担当するペン記者の記事をデスクから受け取り、価値に応じて見出しと組み付け(雑誌で言うところのDTP)を行う。どちらかと言えば、ジャーナリストを支える立場になる。

農業は環境問題に密接に関わり、日々見出しを付ける私たちにとって最新の情報をキャッチすることが、仕事をする上で欠かせない。環境ジャーナリズムでは同じ事柄をどのように報道しているのか、ジャーナリストの皆さまがどのような知見をお持ちなのか、報道の一端に携わる者として学びたいと考え、環境ジャーナリストの会を紹介いただいた。私自身は広報部門が長かったこともあり、報道の目を養う機会を得たかったため、多彩な勉強会は大変に魅力的だった。

整理記者として、組版はもちろんだが、読者に伝えるための「見出し」には日々頭を悩ませている。その当紙から、農業と環境にまたがる動きを二つご紹介したい。

J-クレジット、生産者も購入

温室効果ガスの削減実績を、クレジットとして売買する「J-クレジット制度」。農業者は販売をする側だとイメージされることが多い。代表的なもので、稲作の「中干し」という工程がある。本来は、一時的に田の水を抜く(干す)ことで稲の茎数を抑制し、その後の収穫量の増加を狙うものだ。これが田のメタンガス発生を抑制することからJ-クレジットの制度の対象になり、取り組み面積が増える見通しだ(2024年8月26日、日本農業新聞)。他にも、タマネギ圃場に土壌改良材としてバイオ炭を施用する事例(ホクレン=24年3月21日付、同)などがある。

ここに、出荷作業で出る二酸化炭素(CO2)分を購入するケースが出始めた。北海道のJAきたみらい3生産部会が、北見市から172トンを購入した事例だ(24年7月23日付、同)。同3部会では以前から生産段階でCO2を削減。タマネギ、ジャガイモで環境に配慮しているとブランド化し有利販売につなげており、さらなる取り組みとなる。

なお、JAきたみらいの見出しは私が担当した。整理記者は、第一読者として内容の疑問点を洗い出す立場でもある。この時、「農業者はJ-クレジットを販売する側」と思い込んでいただけに、お恥ずかしい話だが、一瞬間違いかとびっくりして、出稿デスクに電話をかけてしまった。整理記者として視野を広げたいと思うきっかけになった出来事だ。

令和の米騒動を引き起こした猛暑

「令和の米騒動」と呼ばれ、今夏、店頭から米が品薄・高騰になった。さまざまな要因がある中で、その一つが前年の猛暑だと言われている。高温条件下では、米粒が白濁する未熟粒などが発生することがある。精米時には未熟粒を除去するため、同じ量を精米する際、より多くの玄米が必要になる。前年(2023年)産米の1等米比率(3月31日時点)は、過去最低の61%まで落ち込んだため、精米時の歩留まりが平年から2%弱下がった(24年7月27日付、同)。これが米穀店の在庫不足に影響したと言われている。なお、24年産米では全国で、8月末時点で前年同期を下回っているものの、新潟など一部産地で、地域差はあるが、1等米比率が回復傾向にある(24年10月1日付、同)。

農家にとって米価は、ほぼ一番の関心事と言っても過言ではなく、連日報道している。その後の詳報は割愛するが、一部産地で1等米比率が上がった要因は、現場の高温対策が功を奏したことだ。前年同様の猛暑下でも、たゆまぬ努力で状況を改善した農家、関係者の皆さんに敬意を表したい。

 

その他、台風報道とその被害状況、みどりの食料システム戦略、有機農業、資材の廃プラスチック回収など、毎日のように農業と環境に関わる記事を組み付けている。環境ジャーナリストの会で得られる知見を、ぜひ現場に生かしたい。

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