フロント/話題と人 宮武 愛海さん(ハンドメイドブランド「sampai(さんぱい)」代表 )

2024年10月17日グローバルネット2024年10月号

「産廃」で地域の伝統工芸について伝えたい
~西陣織の廃棄素材でアクセサリーを製作・販売~

宮武 愛海(みやたけ まなみ)さん
ハンドメイドブランド「sampai(さんぱい)」代表

京都が育んできた伝統的絹織物、西陣織の製造過程で出る糸や端切れを再利用してアクセサリーを製作・販売するブランド「sampai」。「産廃(産業廃棄物)」を連想させるダイレクトなネーミングだが、インドネシア語では「届く」という意味がある。「それまで捨てられていたものを商品にして届けたい」と、インドネシアにルーツを持つ、代表の宮武さんが考えた。

京都で大学に通い、西陣の町の活性化事業にも関わっていた宮武さんはある時、西陣織の工房で糸や端切れが捨てられているのを目にした。ちょうど授業でファストファッションの問題について学んでいた時でもあった。そこで、アクセサリーの素材として再利用することを思いつき、2021年6月に販売事業をスタート。大学4年生で、他の企業への就職が決まっていたが、衰退する西陣織の伝統を未来につなげる道を選んだ。

絹糸を使った指輪やイヤリング、織物の生地を使ったピン留め…。イベント出店やオンラインショップで購入するのは20~30代の女性が中心だ。宮武さんは商品の販売を通して「伝統工芸の製作工程や廃棄物を再利用する意味、また素材の説明などを徹底的に伝える」と言う。購入した人たちからは「友だちとの会話のきっかけになった」などの声をもらうという。

伝統工芸には数多くの工程があり、完成までには多くの人が関わるが、宮武さんは「作り手の顔が見えやすい伝統工芸にこだわり、特に若い世代にその特色や魅力を発信していきたい」と言う。sampaiが掲げるコンセプトは「産廃を減らす、想いを紡ぐ」だ。

設立から3年。地元のさまざまな企業や施設などと手を組み、さらに事業の幅を広げている。最近では、西陣の織物会社が京都府で回収されたペットボトルを製糸し織り上げた再生ペット西陣織で、京都市内の障害者支援施設の入所者に縫製してもらったクッションを京都市のふるさと納税の返礼品として登録した。

「元々なかったものを作ることが好き」と言う宮武さん。「伝統工芸を“特別なもの”でなく、従来の“日常で使えるもの”に戻したい。地域にも貢献し、さらに多くの地元企業と協働していきたい」。産廃(sampai)が今後どう進化していくかが楽しみだ。(絵)

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