フォーラム随想憧れのガーデニング、大変だけど心の糧に

2024年09月18日グローバルネット2024年9月号

千葉商科大学名誉教授、「八ヶ岳自給圏をつくる会」代表
鮎川 ゆりか(あゆかわ ゆりか)

 ガーデニングは、常に「やりたいことリスト」のトップにあった。子どもの頃は『アルプスの少女ハイジ』を読み、自然の中での生活に憧れ、その後『赤毛のアン』を読み、いつか広い土地に果樹園を造り、ジャムやシロップ漬けなどを作って、マリラおばさんの地下室のような「保存食庫」を造りたいとも思った。
 2018年に長野県の原村に移住したとき、その小さい頃からの夢を実現できる場に、この歳になって来られたのだ、と実感した。広い庭が手に入った。
 しかしここには、ありとあらゆる雑草が茂っており、土を掘っても八ヶ岳の噴火で降ってきた大小の石が山ほど出てきて、何かを植えようとするだけでも大仕事だ。
 また、庭を持つことは初めての経験で、東京で最初に住んだ建売住宅には玄関周辺のわずかな土地に、少し花を植えたりはしたが、その後はマンション暮らしで、ベランダを小さな美しい庭にしたいと思ったが、仕事が忙しく、そうしたことに時間を割ける余裕がなかった。つまりガーデニングはまったくやったことがなかったのだ。

 

 というわけで、何から手を付けて良いかわからない。まずは雑草を取り払いたいが、中には自生するステキな山野草もあり、それが除去したい雑草か否かを判断することができない。雑草の本を片手に、最近は、スマホを手に、撮った写真でどんな植物かを教えてくれるアプリを使いながら、春が来ると作業を始める。
 最初は道路沿いにある、小さなスペースから始め、そこに少しだけ植えた黄色のリキマシアが、1年で定着して小さな黄色い葉で一面が覆われるようになった。また、緑のリキマシアもどんどん増え、初夏には黄色い花をつける。さらに近辺にあちこち自生しているツルニチニチソウを頂いてきて植え、ようやく今年の春、少し紫色の花をつけるようになった。
 今年はツルニチニチソウとともに自生している白いかわいい花を咲かせるニリンソウも移植してみた。この地域に自生する野の花を生かしていくのが、一番の楽しみになった。
 山野草は実に面白い。例えばうちには小さな水路があり、周りの樹木も成長していて日当たりが悪い。つまり湿気のある日陰が多い。しかしそれに向いた「ギボウシ」が種々咲いてくる。ギボウシは種類が多いが、うちのは葉が生い茂ってきてその後、茎が葉の間からツンと伸び、その先に紫色の花が咲く。これが大きな株になり、今では庭のあちこちに咲いている。

 

 私はそれまで花屋さんで買ってきた花しか知らなかったのだが、ここでは見たこともない、名前も育ち方も知らない花々や樹木ばかり。うちの庭のあちこちに自生しているウワミズザクラは、春に細長いコップのような形で白い花を咲かせる。窓から見えるところに咲くので、ある朝窓を開けると、白い花が窓全体を飾ってくれる。そして秋になるとこの形で黄・赤・黒色の実をつけ、とてもかわいい。

 

 このように庭仕事は楽しみではあるが、今年は、原村地球温暖化対策推進委員など、何かと通常業務が忙しく、そのため疲れ、その上この暑さである。原村も昨年より日差しが暑く、木陰に入れば涼しいが、暑い中動き回ると疲れ切ってしまう。故に庭に出る勇気がなく、今年の庭は手入れがまったくできてない。もう少しすれば涼しくなり、庭に出る気が出てくるのではと期待しているが、それにしても、年齢とともにできることが限られてきた。
 庭仕事は毎年、次の春のためにやるので、それが来年への希望、夢につながり、心の糧にはなる。今年は昨年植えたシュウメイギクが花を咲かせそうだし、ハーブガーデンもかなり自生するようになったので、後は、草刈りだけだ。少し元気が出たら、また頑張ろう、と思わせるのも、ガーデニングの効果かもしれない。

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