フロント/話題と人崎濱 花鈴さん、知念 杏珠さん(Okaraokara株式会社 代表取締役)
2024年09月18日グローバルネット2024年9月号
「島豆腐のおからで社会課題を解決したい」
沖縄の食文化に欠かせない島豆腐。その製造過程で発生するおからで「生まれ育った沖縄の経済を盛り上げ、社会課題を解決したい」と取り組んできたプロジェクトが今春、法人化して本格的に始動した。社名はOkaraokara。真正面からOkaraと向き合っている。
共同で代表取締役を務める崎濱さんと知念さんは琉球大学3年生のときに学生の社会課題解決型アイデアコンテストで出会い、そのイベントで、おからの廃棄問題に苦しみ、廃業を迫られている豆腐店の実情を知った。おからの9割は飼料・肥料として利用されるが、残りは豆腐店自らが産業廃棄物として処分することになり、負担が大きい。二人は「この問題を何とかしたい」と意気投合。県内の豆腐店を回って直接声を聴くと、その負担は月40~100万にも上ることがわかった。
そこで2021年6月、二人はおからを使った商品を開発しようと「Okaraokaraプロジェクト」を立ち上げ、生活に身近なスプーンを作ろうと思いついた。自宅のオーブンで何度も試作したが商品化には程遠い。そんな中、愛知県の企業が国産野菜を使った食べられるスプーンを作っていることを知り、相談したところ、その熱意に共感してもらい、同年8月、「PACOON島おから味」が誕生。販売を開始した。
固く溶けにくいクッキーでできたスプーンは、アイスクリームや沖縄ぜんざいなどに、県内のカフェ数店舗で使われ、自治体のイベントや子ども食堂などでも使用・配布されている。「食品ロスや使い捨てプラスチックも削減し環境意識を高める」「伝統食を守ることにもつながる」など、その評判はSNSでの発信で全国にも少しずつ広がり、累計販売数は2万本を超えた。
大学を卒業して2年。社会学を専攻した崎濱さんは教員になる予定を変更し「社会課題の解決のために活動したい」と決意。観光学を学んだ知念さんも東京の企業に就職したがUターンし「沖縄経済の振興に貢献したい」と意気込む。今後はおからの価値を高め、日常的に使う食材となるよう新商品の開発やおから料理のワークショップなど積極的に展開していくつもりだ。
自宅のオーブンから始まった小さな一歩が社会を変える大きな力になるか。今後の展開が楽しみだ。(絵)