環境条約シリーズ 388第8回北太平洋漁業委員会 サンマ・サバ・イワシ・イカの管理措置
2024年07月16日グローバルネット2024年7月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
日本の漁業生産量(養殖を含む)は1984年の1,282万トンから減り続け、2023年は372万トン(石川県を除く速報値)で過去最低となった。特に、サンマとスルメイカは20年前のおよそ10%という深刻な不漁である。サンマ不漁の原因は、黒潮の流路変化によりその稚魚の生育域が餌の少ない外洋へ移動したことや外国漁船による漁獲増などであり、国際的な資源管理が必要とされている。
それに応えて、24年4月に大阪で開かれた北太平洋漁業委員会の第8回会合において、サンマ・マサバ・マイワシ・アカイカ・スルメイカについて、対象の北太平洋公海で操業漁船数を増やさないこと、隣接の沿岸国管轄域でも同様の措置を取ること、新規参入は上記委員会の決定を要することが定められた。
さらにサンマについては、資源調査に基づいて前年比10%の変動幅で自動的に総漁獲量を決める方式が採用された。24年については、対象公海域の総漁獲量を13.5万トンとし、国別割り当て決定までの暫定措置として各国は18年漁獲実績から55%削減すること、また、沿岸国管轄域の漁獲量は日本とロシア合わせて9万トンと定めた。サンマの分布の全域で22.5万トンが上限とされたが、全域での近年の漁獲量は10万トン前後で推移しているため十分な規制にはならない。なお、マサバについても、24年・25年の対象公海域の総漁獲量は9.4万トン(底引き漁1.4万トン、巻き網漁8万トン)と定められた。
以上に従って国内では5月に、漁業法の下の特定水産資源(サンマ)に関する漁獲可能量が変更され、前年比6.1%減の11万911トン(日本とロシアの管轄域で8万9,824トン、公海域で2万1,087トン)と定められた。これまでで最低の水準であるが、近年の漁獲量は2万トン程度のため影響はないとされる。
他方で、国内でも温暖化に伴う表面海水温の上昇により、ブリ・タチウオ・サワラなどの主要漁場が西日本から東北・北海道へと移動しており、漁業全体としての調整および対策が求められている。