環境条約シリーズ 386締約国会議の決議の整理 ボン条約による一覧表
2024年05月16日グローバルネット2024年5月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
国際条約には数十年前から活動を続けているものも珍しくなく、それらの締約国会議(COP)や下部機関によって採択されてきている決議、決定や勧告など(以下、まとめて決議と記す)も多数に上る。それらには短いものもあるが、附属書もしくは付表、または、原則、基準、指標、規則、手続き、手法、手引きもしくは指針などの文書が付随されているものもある。それらの決議および文書は、条文の具体化・詳細化を担っており、国内法制度において行政機関が定める施行令や施行規則などと同様に、当該条約の効果的な実施を確保するための重要な役割を果たしている。
それぞれの条約の規制対象分野の状況の変化、また、技術や社会の発展に合わせて、以前に採択された決議を改正するための決議が新たな記番号の下に採択されることも多い。その新決議には、比較検討できるように、それまでの経緯とともに旧決議の記番号が引用されているが、それは本文を開かないと分からない。他方で、予算措置、年次計画、構成員の任命など有期限の決議もあれば、期限の定めのない決議もある。前者の場合は当該期限後には失効しており、後者の場合でもその後の改正によって廃棄されたものもある。
従って、調べたい条約のCOPや下部機関の各会合において採択された決議の一覧表(記番号と表題)にインターネット検索でたどり着いても、そこには失効したものと有効なものとが混在している。その混在を解消して現時点で有効な決議だけの一覧表を作成している条約もあるが、それぞれの表題の最初の決議の採択時期やその後の改正状況は分からない。
以上のような状況の改善に向けて、ボン条約(本誌1993年9月)は、有効な決議の一覧表の作成に当たって、「決議7.3(改COP12):ジュゴン保全のための生息国協定」のように、最初に採択されたときの決議番号を維持しつつ改正COP番号を追記するという手法をCOP12(2017年)において採用した。これにより、本文を参照しなくても一覧表を見れば最初の決議と最新の改正との関係が分かるようにされている。