フロント/話題と人井本 直歩子さん(一般社団法人SDGs in Sports代表理事)

2024年05月16日グローバルネット2024年5月号

スポーツの力でプラごみ削減を
~アスリートによる社会課題解決の輪を広げたい~

井本 直歩子(いもと なおこ)さん
(一般社団法人SDGs in Sports代表理事)

競技を超えてスポーツ界全体でプラスチックごみの削減に取り組むプロジェクト「HEROs PLEDGE プレッジ」が3月末にスタートした(詳細は本誌「ホットレポート」参照)。プロジェクトの発案者であり、参加するアスリートたちをリードするのが井本さんだ。

1996年開催のアトランタ五輪にも出場した元競泳選手の井本さんは、日米の大学で国際関係について学び、競技引退後は英国の大学院で、紛争・平和構築の分野で修士号を取得したという経歴を持つ。そして国際協力機構(JICA)や国連児童基金(ユニセフ)の一員として、アフリカやアジアなどの途上国や内戦下の国、大災害に見舞われた国などで、一貫して教育支援や平和構築・復興支援に取り組んできた。

国際舞台で奔走してきた井本さんだったが、自らのバックグラウンドの一つであるスポーツの力を生かして社会課題の解決を目指そうと2021年、一般社団法人SDGs in Sportsを設立。ビジョンに共感する仲間の輪を広げてきた。そして今回、深刻な環境問題の原因の一つである、使い捨てプラスチックの削減にスポーツ界から本気で取り組もうと日本財団に呼び掛け、プロジェクトが始動。多くのアスリート仲間たちもすぐに賛同し、参加をPLEDGE(宣言)してくれたという。

スポーツの試合会場では観客の飲食などによる使い捨てプラスチックごみが特に多く出る。一方、多くのアスリートたちは猛暑や雪不足、海洋汚染などによる競技への影響を肌で感じている。「実体験で語れるアスリートによる発信力と求心力は大きい」と井本さん。「彼らが行動を起こすには問題の本質を知り、正しい知識を身に着けなければならない」と、専門家を招いた勉強会や現場での視察などを積み重ねてきた。その結果、参加アスリートたちはファンやチームメートへの働きかけやSNS発信など、活動を広げ始めている。

「2027年度末までに主要スポーツの興行における使い捨てプラごみの半減」がプロジェクトの目標。「アスリートは競技生活で培った、折れない心、立ち向かう勇気、やり遂げる力がある。その力で人の心を動かし社会を変えることができる」。井本さんは競技を超えたスポーツの力の可能性に胸を膨らませる。(絵)

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