ホットレポート日本政府の気候・エネルギー予算とGX投資の現状~2024年度の気候・エネルギー予算と3年間のGX投資の分析
2024年04月16日グローバルネット2024年4月号
Climate Integrate プログラムディレクター
小俵 大明(おだわら ひろあき)
2024年3月、国の2024年度予算が成立しました。予算には、グリーントランスフォーメーション(GX)を推進する政府方針の下で、GX経済移行債を財源にしたGX投資も組み込まれています。気候・エネルギー対策を促進する上で、政府予算の規模や、政府が計画する先行投資の着実な実施は重要です。政府の気候・エネルギー予算の現状を把握するため、Climate Integrateは、政府の公表資料や関係省庁への照会等を通じて可能な限りの集計を行い、レポート『日本政府の気候・エネルギー予算とGX投資の現状』にまとめました(※)。ここではその概要をご紹介します。
(※)レポート全文はhttps://climateintegrate.org/archives/5574で閲覧・ダウンロードできる。
2024年度予算に含まれる気候・エネルギー予算
(1) 気候・エネルギー予算の全体像
政府資料を基に独自に集計したところ、2024年度の政府予算113兆円のうち、気候・エネルギー予算の総額は1兆7,534億円です。これは予算全体の1.6%に過ぎません。気候・エネルギー予算のうち、34.4%(6,036億円)を占めるGX推進対策費はGX経済移行債を財源としています。GX推進対策費の3分の1以上は蓄電池関係予算が占めています(図1)。
(2) 気候・エネルギー予算の省庁別内訳
省庁別では、経済産業省の予算額が全体の7割以上(72%)を占めています。これは2番目に多い環境省の約7倍です。特に化石燃料分野(水素・アンモニア、CCUSを含む)の予算額が多くなっています(図2)。
(3) 気候・エネルギー予算の分野別内訳
分野別では、省エネや化石燃料、分野横断(電源立地交付金、GX推進機構出資金、等)の3分野が全体の6割を占める一方、再エネ予算は1割未満となっています(図3の内円)。GX推進対策費の割合(図3の外円・黒)は、蓄電池などの分野で高く、化石燃料、原子力などの分野で小さくなっています。特に化石燃料分野には、エネルギー対策特別会計の予算が毎年大きく振り向けられる一方で、2022-2024年度のGX推進対策費はほとんど割り振られていないため、資金使途に応じて両者のすみ分けがなされている可能性があります。
GX推進対策費
(1) 10年間のGX推進対策費の規模と現状
次に、GX推進対策費について整理します。政府は、2023年度以降の10年間に、GX経済移行債(国債)を財源として、20兆円を先行投資し、民間投資との合計で150兆円超の投資を実現するとしています。これまでの政府によるGX投資額は、2022年度(20 兆円の先行投資には2022 年度補正予算も含まれる)と2023年度に行われた2兆9,720億円、2024年度予算に計上されている6,036億円の計3兆5,756億円です(図4)。
2024年度予算の概算要求(2023年8月公表)段階では、2024年度のGX推進対策費として1兆2,608億円が計上されていましたが、財務省との協議を経て閣議決定された2024年度予算案(2024年1月公表)ではGX推進対策費が6,036億円に半減しました。中でも、くらし(1,484億円)、自動車(1,417億円)、半導体(1,078億円)の各分野に対する概算要求は予算案に全く盛り込まれませんでした。
政府によるGX投資が2022-2024年度の3年間(計3兆5,756億円)と同規模で継続される場合、政府が公約している20兆円には届きません。さらに、民間投資との合計額である150兆円については、民間から更なる投資(130兆円)を呼び込むための道筋は描けていません。
(2)重点分野別の今後10年間の官民投資額に対する現状の投資額
政府は、総額150兆円超に上る今後10年間の官民投資額の内訳を重点分野別に示しています(図5棒グラフ)。政府の2022-2024年度のGX投資額を、今後10年間の官民投資額と比べると、原子力や蓄電池には既に多額の投資がなされている一方で、再エネへの現状の政府投資額が極端に少なくなっています(図5ドットチャート)。このように、政府のこれまでのGX投資は、政府計画との比較において、分野別の予算配分に大きな偏りが生じています。
まとめ
今回の分析では、2024年度の政府の気候・エネルギー予算は予算全体の1.6%に過ぎないこと、そのうち再エネ予算が1割未満にとどまること、GX推進対策費が概算要求額から半減していることなどが明らかになりました。一方、気候・エネルギー予算額を政府の公表資料から正確に把握することは困難でした。政府には、情報開示における一層の透明性の向上とわかりやすい情報発信が求められます。