環境の本次世代パンデミックに備える ~感染症の文明史
2024年04月16日グローバルネット2024年4月号
次世代パンデミックに備える ~感染症の文明史
著●井上 栄
筆者は国立公衆衛生院、国立感染症研究所などでウイルス、微生物などによる感染症の疫学研究を重ねてきた。コロナ禍の4年間が終わった機会に「コロナ流行の全体像をとらえ、一般の人に解説したいと思い専門書でない本を書いた」と言う。文明と疫病の章では、江戸のはしか、エジプトのマラリア、中世ヨーロッパのペストなどについて疫学の立場から伝播経路の解明などにも迫っている。
解剖学者の養老孟司氏が「新たな脅威に備えるために正しい知識を身に着けたい」と本書の推薦文を書かれている。コロナによる死者が米国などに比べて日本は極端に少なかった点について、日本人は口数が少ない、日本語は飛沫を飛ばす子音が少ない、自然災害が多く助け合い精神があるなど、感染症が人びとの行動文化に影響されているとの解釈は新しい知識として大いに役立つ。(A&FBOOKS、2,200円+税)