環境条約シリーズ 385持続可能なコーヒー産業の発展 国際コーヒー協定の改定
2024年04月16日グローバルネット2024年4月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
日本は世界第4位のコーヒー輸入国(生豆換算19年輸入量ベース)であるが、新興国における需要増もあって国際コーヒー市場の需給は逼迫している。コーヒー産業の発展と需給の均衡などを目的とする現行の国際コーヒー協定(本誌18年2月)は24年2月に終了予定のため、新協定が22年6月に採択された。なお、新協定の発効の遅れに備えて、現行協定の有効期間は26年2月1日まで2年間延長されている。
新協定の背景には、生豆価格の低迷、貧困、食糧不安、環境悪化などによって多くの零細コーヒー生産者の生計維持が難しくなっていることがある。そのため、特に小規模生産者が公正な利益を享受できるように、生産から消費までのすべての利害当事者の参加に基づく持続可能なコーヒー産業の発展が新協定の中心に据えられた。また、その発展が持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献することも確認された。
現行協定と異なる事項としては、①民間部門(零細業者を含むコーヒー産業の私人・企業)または市民社会(非政府・非営利団体)の主体を対象にして、専門的な助言を行う「賛助加盟員」の資格が新設された。その資格認定は理事会(締約国会議に相当)が行い、賛助加盟員会の議長と副議長は理事会への参加と発言が認められる。②コーヒー産業の長期的な持続可能性を実現するための行動に関する「コーヒー官民作業部会」が新設された。その構成員は理事会が指名する政府代表および民間部門の代表(それぞれ同数)であり、また、市民社会および国際機関の代表は理事会が定める条件の下でその会合に参加することができる。③理事会と下部機関には賛助加盟員や国際機関による助言・貢献の機会を保証すること、賛助加盟員には積極的な参加・報告・情報交換が要請されている。
そのほか、各加盟国の配分票数や分担金の算定に際して、輸出入価額を基準にすることが決定された。
コーヒーの持続可能な生産についてはEU(ヨーロッパ連合)の森林規則(本誌24年3月)も定めているため、相互の連携協力が必要とされる。