環境条約シリーズ 382ストックホルム条約 廃絶すべきPOPsの追加掲載

2024年01月18日グローバルネット2024年1月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約(本誌2000年11月、01年5月、11年12月、13年6月、15年6月)は、規制対象のPOPsを附属書A(廃絶)、附属書B(制限)および附属書C(削減)に掲載している。附属書への追加掲載の手順としては、POPs検討委員会(POPRC)が、締約国からの提案物質に対して、順次、①選別審査、②危険性の詳細検討、③危険性管理の評価検討の3段階を行い、③を経た物質の掲載を締約国会議(COP)に勧告する。

そのPOPRCからの勧告に基づいて、23年5月に開かれたストックホルム条約のCOP11において、メトキシクロル、デクロランプラス(DP)およびUV-328が附属書Aに追加掲載された。まず、メトキシクロルは、主に殺虫剤として使われているが、日本国内では使われていない。次に、DPは、ハロゲン系難燃剤であり、耐熱性、耐候性および絶縁性が高いため電線・通信線の被覆材として半世紀以上にわたって使われてきている。また、UV-328は紫外線吸収剤であり、主に紫外線による劣化防止のために、ゴム・プラスチック製品、インク・塗料、接着剤など身の回りの製品にも使用されている。

附属書Aには、当初は9物質が掲載されていた。COP4以降毎回追加されてきており、COP11での追加によって合計32物質(まとめて2物質の掲載が2件あり、それらを4物質として計算)になった。なお、上記POPRCにおいては、長鎖ペルフルオロカルボン酸(フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤など)、中鎖塩素化パラフィン(難燃性樹脂原料など)およびクロルピリホス(殺虫剤)が今後のCOPでの追加掲載に向けて審査・検討中である。

COP11による追加3物質について、国内では、化学物質審査規制法(化審法)の下の第一種特定化学物質としての指定に続いて、輸入禁止製品の指定、また、特定の用途以外の使用制限などの具体的な措置の検討が進められており、それらを定める改正政令は24年後半に施行されると想定されている。

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