NSCニュース No. 147(2024年1月)定例勉強会報告 「国際プラスチック条約の策定に向けて~プラスチック問題の国際的潮流と日本の取組~」
2024年01月18日グローバルネット2024年1月号
NSC 勉強会担当幹事、サンメッセ総合研究所(Sinc)所長・首席研究員
川村 雅彦(かわむら まさひこ)
深刻なプラスチック汚染を解決するため、国連を中心に多様な主体が動き出している。昨年12月8日に定例勉強会(オンライン)を開催し、環境省、業界団体、企業の取り組みについて、三人の登壇者から講演いただいた。
「プラスチック条約交渉のこれまでと今後~INC3交渉を受けて」
環境省参与/INCアジア太平洋地域代表 小野 洋 氏
(1)条約策定に向けた交渉の経緯
2022年3月:国連環境総会(UNEA)でINC(政府間交渉委員会)の設置。
2022年12月:INC1(ウルグアイ)で正式交渉開始(約150ヵ国参加)。
2023年6月:INC2(フランス)で条約素案(ゼロドラフト)作成の決定。
2023年11月:INC3(ケニア)でゼロドラフトに各国意見を入れた改訂案作成。今後、自発的な活動に期待。
2024年11月:INC5(韓国)での合意、2025年内の最終化を目指す。
(2)ゼロドラフトに関する議論
ゼロドラフト(項目ごとにオプションを議長提示)に対しさまざまな意見が出された。主要テーマは以下のとおり。
①一次ポリマー
②懸念ある化学物質およびポリマー
③問題があり回避可能な製品
④製品設計・性能
⑤廃棄物管理
(3)次回のINC4に向けて
方向性は見えつつあるも、具体的なことはまだ何も決まっていない。ただ、
・改訂ドラフトに基づき、オプションの統廃合と絞り込みに集中。
・特定の技術的詳細について、一定の共通理解の醸成が必要。
「CLOMAの活動とINC3参加報告」
CLOMA事務局主幹 中村 健太郎 氏
(1)CLOMAの概要
2019年、消費者向け商品のサプライチェーン企業等が設立し、プラスチック循環利用の徹底で、消費者とともに海洋流出プラスチックごみのゼロ化を目指す(現在508社・団体)。
既に滞留している海洋プラごみを回収するとともに、新たにプラスチックを流出させない取り組みを目指す。
(2)CLOMAの活動
アクションプラン:海洋プラスチックごみ削減のため、2050年までに容器包装等のプラスチック製品100%リサイクルを目指す。
取り組み事例:企業連携、自治体との連携、容器回収・再資源化プロジェクト、インドネシア協力活動等
(3)CLOMAのINC3参加報告
・CLOMAは国際的プレゼンスの向上を目指してUNEPオブザーバーとして参加し、公式サイドイベントに参加。
・プラスチック汚染の定義(プラスチック起因の汚染問題は、適切に管理されないまま、廃棄物として海洋を含む環境中へ排出されたときである)に関するステートメントを提出。
・ケミカル・リサイクルの取り扱いに関する懸念の意見表明。
「リユース・リサイクルをビジネスに」
テラサイクルジャパン/Loop Japan 代表、アジア太平洋統括責任者 エリック・カワバタ 氏
(1)テラサイクルの理念
理念:「捨てるという概念を捨てよう(Eliminating the Idea of Waste)」
現在、過剰な消費と使い捨ての文化。
リサイクルビジネスの方程式:
「物流・処理費用 <出来上がるモノの価値=リサイクル可能」
技術的にはリサイクル可能であっても、多くの素材は経済合理性がなく、使用後焼却や埋め立て。他方、製品を作るために材料を地球から採取する。
(2)テラサイクルの事業内容
★リサイクル・プログラム
処理が困難で、普段は捨てている物(化粧品容器や歯ブラシ等)を再生品にするリサイクルを実現する回収モデルを構築。有名ブランドや製造メーカーと組んで、無料のリサイクル・プログラムを22ヵ国で展開。
事例:ロフトと協働し、35ブランドの使用済み空き容器を全国155店舗で回収・リサイクル。ロレアル、パイロット、第一三共とも連携。
★リユースショッピング「Loop」の構築
Loopプラットフォーム:イオンと提携し、小売店で中身と容器を分けて売価記載、容器返済拠点にて回収、デポジット返却、容器の保管・洗浄、再充填の後、店舗で再度販売。容器の所有権はメーカーにある。