フロント/話題と人ロッシェル・カップさん(「神宮外苑再開発事業認可取消し訴訟」原告団長、経営コンサルタント)
2023年11月15日グローバルネット2023年11月号
美しく豊かな神宮外苑の緑を守りたい
~再開発計画の見直しを訴える~
昨年2月、オンライン署名「神宮外苑1,000本の樹木を切らないで~再開発計画は見直しを!」が始まった。発起人のカップさんは東京・明治神宮外苑を中心とする地域の再開発事業の内容を知り、「反対署名運動を起こしたくなりました。支援してくれますか」とSNSに投稿したところ、賛同のコメントが殺到。早速署名サイトを立ち上げた。そして、今年2月末には、東京都に対し事業認可の取り消しなどを求め提訴した。
計画は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の移転・建て替え、高層ビルの建設などが主な事業で、1,000本近い樹木の伐採が予想される。この事業について、近隣住民への説明や環境影響評価(アセスメント)の内容や手続きが不十分であり、開発プロセスが不透明であること、温暖化対策として世界各国が緑を増やそうとしている流れに逆行して樹木を伐採する必要性があるのか、秩父宮ラグビー場のように長年市民に親しまれてきた歴史があり公共性の高い施設は取り壊しでなく改修するべきではないか、高層の商業施設建設に採算性があるのか、カップさんは多くの疑問を投げかける。
この再開発計画に対し、これまで多くの文化人や専門家たちも反対の声を上げている。9月には、ユネスコの諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)が、「文化遺産の不可逆的な破壊だ」として撤回を求めた。集まった署名は、22万8,000筆を超えた。
カップさんは2021年にも都心で公園の木の過剰な剪定を伴う東京オリンピック・パラリンピックのパブリックビューイング開催に対し、オンラインで15万以上もの反対署名を集め、中止を実現させた。その成功体験から、「不合理な開発計画に対し、市民は誰でも声を上げられるのです」と力強く訴える。
日本とアメリカを拠点に、組織の活性化やリーダーシップ研修などを専門とする経営コンサルタントであるカップさんは、小池都知事に対し、「市民が暮らしやすい環境をつくるためにリーダーシップを発揮してほしい」と求める。そして、「美しく豊かな神宮外苑の緑を守り、市民も含む民主的なプロセスによる、新たな都市開発の在り方を見せてもらいたい」と、活動や訴訟の先頭に立ち、計画の見直しを求めていく。(絵)