ホットレポートRefillサミット2023 in 京都 公開セッション「リフィル推進で地球も地域もサステナブル」報告
2023年05月15日グローバルネット2023年5月号
グローバルネット編集部
2月4~5日、京都市内において、給水スポットとリフィル行動を広げるRefill Japanが全国で活動する地域団体を集め、「Refillサミット2023 in 京都」を開催した。その公開セッション「リフィル推進で地球も地域もサステナブル」では、大阪産業大学准教授、花嶋温子さんが基調講演を行い(概要は囲み)、パネルディスカッション「地域でリフィル行動の参加者を増やすには」では、市民、事業者、行政による実践が紹介され、その取り組みをさらに広げるためのポイントが議論された。その概要を紹介する。
大阪府の「Osakaほかさんマップ」(大阪府資源循環課 上原梢さん)
大阪府では2019年に大阪市と共同で「大阪プラスチックごみゼロ宣言」を行い、G20大阪サミットで共有された「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減すること」を目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向けて、マイボトルの普及などプラスチックごみ削減の取り組みを推進しています。また、2021年3月に改定した大阪府循環型社会推進計画においてもプラスチックごみ対策に重点的に取り組むこととしています。
プラスチックごみ削減の目標を達成するための取り組みの一つとして、2021年10月から「Osakaほかさんマップ」を公開しています。マイ容器やマイボトルが利用できる店舗をスマートフォンやパソコンから簡単に検索できるWEBサイトで、プラスチック容器などを「ほかさんといて(大阪弁で「捨てないで」の意)」という思いを込めています。
新型コロナウイルスの影響で、在宅時間が増えたことや、テイクアウトなどの利用などにより、使い捨てプラスチックごみが増加する中、さらなる行動変容が必要になりましたが、マイボトルの普及には「どこの店舗で利用できるかわからない」ことが一つの課題でしたので、マップ化により府民の皆様にわかりやすく、また事業者も掲載するメリットを感じられるようなサイトを目指しました。マイ容器対応店舗のマップ化というのは全国の都道府県でも初めてと聞いています。
店舗の基本情報だけでなく、マイ容器の利用可能なメニューや容器のサイズなども掲載でき、全て無料で掲載可能です。事業者は自由に情報登録・更新が可能で、取り組みや店舗のPRもしていただけます。
掲載店舗数は昨年10月末には延べ622店舗に増えました。閲覧数は継続して毎月約5,000ページで、事業者・利用者双方から好評をいただいています。
引き続き掲載店舗数の増加を図りながら、効果的にマイ容器・マイボトルの利用が身近なものになるよう情報発信をしていきたいと考えています。
捨てずに返す容器のシェアリングサービス「Re&Go」(NISSHA株式会社 吉村祐一さん)
Re&Goは、3R(Reduce、Reuse、Recycle)に、容器を繰り返し使って返却するというReturn、「使い捨て」を再考したいというRethinkを加えた5つのReと、「行動に移す」という思いを込めたGoを組み合わせた容器のシェアリングサービスです。
日本のごみのうち容積比率が多い容器包装の中でも約16%を占めるお弁当などの容器を捨てない仕組みを提供し、ごみ問題を解決する一助となるインフラを作っていくことを目指しています。そしてごみの削減と同時にいろいろな価値を付けていきたいと思っています。その一つが「可視化」で、サービスの利用による使い捨てカップの削減量やCO2排出相当量を見える化するユーザーインターフェースを提供しています。
Re&Goカップは使い捨てカップの代替となるサービスで、東京都内で実証実験をしています。テイクアウトでドリンクを購入し、使用後のカップは加盟店舗で返却、回収された容器を定期的に洗浄し、必要な分を納品していくというシンプルな仕組みです。
実証実験でのユーザー登録数は約10,800名で、総利用数は約4万200個。期限内(3日以内)の返却率は97%で、コロナ禍で出社できなかったなど、期限以降の返却分を合わせると100%に近い返却率です。実証実験にはスターバックスコーヒーやローソンなどに参加いただいていますが、オフィスや複合商業施設、輸送・洗浄を担う各地域のパートナーをつなぐことで、地域内の循環経済に貢献していきたいと考えています。
今後はエリアを広げ、事業としても収支をしっかり保たなければいけません。その二つを両輪として実証実験を通じてサービスを展開していきたいと思います。
「祇園祭ごみゼロ大作戦」(地域環境デザイン研究所ecotone 太田航平さん)
2001年から大量生産・大量消費・大量廃棄システムの変革を進めるため、環境共生型のまちづくりを進めるための調査研究と実践活動を展開しています。3Rの中でも2R(Reduce、Reuse)に焦点を当てた仕組み作りを進めてきました。リユース食器のレンタルを始め、2004年から事業化しています。
「天神祭ごみゼロ大作戦」「祇園祭ごみゼロ大作戦」を展開していますが、お祭りやイベントでの取り組みをどう日常の中に実装させていくかが大事です。会期中に排出されるごみは、重量では生ごみや紙ごみが多く、容積では包装容器が多く、家庭ごみの組成割合と似ています。短時間に物が大量に消費され廃棄されていく中で、「いかにごみを減らせるか」についてしっかり取り組むことで、日常の中で生かされることはたくさんあります。イベントの主催者や参加者だけでなく、多くのステークホルダーと共に、共通のテーブルを作ることがNGO/NPOの役割だと思っています。
京都市では早くから市が主催するイベントの多くでリユース食器が導入され、多くの市民が経験してきました。野外音楽イベント、保育園の夏祭り、大小さまざまなイベントでもリユース食器を導入しており、祇園祭での取り組みにつながっています。
さらに、ディスカッションではデザインや機能性も含めた、取り組みを広げるための方策についても議論された。主催したRefill Japan事務局である水Do!ネットワークの事務局長で、今回モデレーターを務めた瀬口亮子さんは「公園の水飲み場はイメージが良くなく、利用者は多くはないですが、イベントでデザインの良い仮設給水機を設置したらたくさんの人が利用しています。デザインの力は大きいです」と話した。
また、「Refill Japanでは、無料で給水できる場所やマイ容器で買い物できる店をマップに登録していますが、登録数を増やすだけでなく、利用率を上げていかないと環境負荷低減になりません。商店街や町ぐるみの取り組みで参加者を増やしていきたい」と言う。
さらに花嶋さんは「給水機の設置やリユースの仕組みを作るところで、企業のCO2やプラスチックの削減という新たな価値をカウントして共有すれば、新たな価値をみんなで生み出すことも可能なのではないか」とし、今後リフィル推進活動の参加者を増やし、広げていくためのヒントを提示した。
基調講演「正解は一つじゃない!さまざまな3Rの取組について」で紹介された給水に関する二つのトピック
花嶋温子さん(大阪産業大学准教授)
①会議で提供されるお茶
2014年、大阪府内の43の自治体に対し行ったアンケートでは、「廃棄物減量等推進審議会がある」自治体は26、「環境審議会がある」は28。その約半数が会議開催時、委員一人ずつにペットボトル入りのお茶を出しており、大きなペットボトルからコップに入れて出すのは、両審議会ともに11%でした。
リユース瓶のお茶を出しているのは廃棄物減量審議会1ヵ所のみ。他は「費用がかけられない」「良いことだが費用をかけてまでやるのは難しい」などの理由で利用はされていません。アンケートでは、「そもそも会議に飲み物は不要」「飲み物は参加者が持参するべき」という回答もありました。
②お祭りとペットボトル
二日間で約130万人の来場者があり、日本一露店が多い大阪の天神祭で、2017年に「天神祭ごみゼロ大作戦」が始まり、露天商の組合や大阪市、環境団体などが、ごみの分別を呼びかけ、リユース食器も導入されています。
2019年にごみ集積所のペットボトルを調査しました。捨てられていた1,098本の種類は280以上で、その10%以上は会場内の露店ではなく、コンビニやスーパーで買って持ち込まれたものでした。飲料の種類は、水分補給に必要な水とお茶が46%であったことから、それに代わるものとして給水機が会場内に設置されました。販売者である露店だけでなく、ペットボトル飲料の生産者にも一定の責任を負う必要があると、協働を呼びかけていますが、まだ実現していません。