フロント/話題と人亀井 裕介さん(やながわ有明海水族館 館長、福岡県立高校3年生)

2023年03月15日グローバルネット2023年3月号

「生き物オタク」、青春を駆ける
~故郷の自然と生き物を守るために~

亀井 裕介(かめい ゆうすけ)さん
やながわ有明海水族館 館長
福岡県立高校3 年生

福岡県柳川市で、有明海や柳川掘割(水路)にすむ生き物約80種類を展示する「やながわ有明海水族館」、通称「やな水」。地元のNPO法人「SPERA森里海 時代を拓く」が運営するこの小さな水族館が、今、全国の生き物好きから注目を集めている。立役者となったのがこの2年間、高校生館長を務めてきた亀井さんだ。

亀井さんの「やな水」との出会いは小6の時。「いつも行ってる身近な川にこんなに魅力的な世界が広がってるのか」と衝撃を受けて以来、月一回通い、手伝いをさせてもらうほどの常連となり、後に副館長、そして館長に任命された。高校3年間、月2~3回休みの日に、福岡市内の自宅から片道2時間かけて通勤。自らを「館長というより、スタッフ兼広報委員長」と言うように、接客や受付から餌やり、掃除、そして「生き物オタク」を自認するほどの知識量と得意なしゃべりを生かし、テレビ出演や取材対応もこなしてきた。

亀井さんが館長として始めた取り組みの一つが、入館料を無料にする代わりに水族館の手伝いをしてもらう「子ども職員制度」だ。水族館の人手不足を補うだけでなく、生き物好きの子どもたちが出会える場づくり、そして「第二の亀井裕介」を育てることが目的だ。

放課後や休日は自転車に乗り、田や川、干潟に生き物を捕りに出掛け、多い日は一日に10枚以上の写真をSNSに投稿する。2月には海岸に打ち上げられたリュウグウノツカイ(写真)を発見し、みそ汁にして食べる様子も載せた。マニアックな投稿が大学の先生の目に留まり、ネット上でつながることもあるという。

今年4月、佐賀大学に進む亀井さん。「生まれ故郷であり、一番好きな土地である九州北部の生き物を学べる」こと、オープンキャンパスの模擬講義で尊敬する先生に話しかけ仲良くなったこと、そして「やな水」が近いことが進路選択の決め手になった。大学では、自然環境の保全のために、生き物の調査を通して得たデータを行政機関に共有できるようになりたいという。

Twitterのプロフィール写真には、「青春」の文字が魚に食われる絵。出会い、進路選択、館長の仕事、休日の過ごし方、将来の夢。全てが川の生き物を中心に回ってきた亀井さんの青春はこれからだ。(克)

※「やな水」の活動の一部については、「ホットレポート」でも紹介されていますので、あわせてお読みください。

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