環境条約シリーズ 369サメ・エイ類の保全管理
2022年12月15日グローバルネット2022年12月号
前・上智大学教授 磯崎 博司
近年、サメやエイなどの板鰓類の漁獲量は世界中で急増しており(年間約1億尾)、また、その半数ほどは混獲によるとされる。主な需要は食用(すり身やフカヒレ)である。板鰓類は成長が遅く幼魚の数も少ないため、その保全管理が求められており、ボン条約、ワシントン条約、地域漁業管理機関(RFMO)の3制度の下で対応が図られてきている。
まず、ボン条約は2010年2月に回遊性サメの保全に関する覚え書きを採択した(本誌2010年7月)。22年時点で、締約当事者は、ヨーロッパ・アフリカ・南北アメリカ・アジア太平洋地域から48ヵ国とEU(ヨーロッパ連合)および14連携団体であり、軟骨魚綱に属す回遊性の37種が対象である。
次に、ワシントン条約においては板鰓類の附属書Ⅱへの掲載提案が続いている。その第12回締約国会議(02年COP12)でジンベイザメ・ウバザメ、COP13でホホジロザメが掲載されたが、COP14とCOP15での提案はいずれも否決された。その後は、13年COP16でのヨゴレ・シュモクザメ類・ニシネズミザメ・オニイトマキエイ類、16年COP17でのオナガザメ類・クロトガリザメ・イトマキエイ類、19年COP18でのアオザメ・バケアオザメ・ノコギリエイ類、22年11月COP19でのメジロザメ科54種・シュモクザメ科全種・淡水エイ類・ノコギリエイ類(サカタザメ科)に関するそれぞれの提案は可決された。
なお、これらの提案の多くに、附属書Ⅱの生物学的基準には該当しないが、その掲載種の効果的な取り締まりのために規制すべき種(類似種:条約第2条2項(b))が含まれている。たとえば、COP19でのメジロザメ科54種のうち35種は類似種であり、日本で最も漁獲量の多いヨシキリザメも含まれている。そのため、35種またはヨシキリザメを除く旨の修正案も出されたが、いずれも否決され原案が可決された。
他方、RFMOの一角を担う大西洋マグロ類保存国際条約は、改正議定書により対象魚種に海洋・表層・高度回遊性の板鰓類を追加した(本誌22年1月)。