フロント/話題と人村上 春二さん(株式会社UMITO Partners 代表取締役)

2022年11月15日グローバルネット2022年11月号

海と人をより近く ~生産と消費、政策をつなぐ~

村上 春二(むらかみ しゅんじ)さん
(株式会社UMITO Partners 代表取締役)

「ウミとヒトが豊かな社会の実現」を目指して、昨年6月に設立されたUMITO Partners。政府への働き掛けや水産関連企業の取り組みの支援を強みとした前職・シーフードレガシーから、村上さんが独立する形で立ち上げた。2020年12月、改正漁業法施行や水産流通適正化法の公布など、持続可能な水産業に向けた国の政策が相次いだ中、「漁業現場の人に寄り添う活動をしている組織が少ない」、魚種も漁法も多様な日本の漁師を「現場の目線でより一層サポートする必要がある」と感じたことが設立のきっかけだ。

村上さんが事業の中心に据えているのが、漁業者がさまざまな利害関係者と協力して地域漁業の持続可能性の向上に取り組む「漁業・養殖業改善プロジェクト(FIP・AIP)」だ。FIPを公言するには、厳格な国際基準に基づき、幅広い利害関係者との合意、科学に基づく共同計画の策定、情報開示や進捗状況のモニタリングが求められる。プロジェクトを立ち上げるだけでも通常1~2年と、時間も手間もかかる取り組みだ。

その取り組みをさらに広げるために、今UMITO Partnersでは、現場の漁師を対象に、漁業の現状と未来を考える「UMITO NARIWAIワークショップ」のシリーズ開催を企画している。「『捕って終わり』ではなく、捕った魚の販路、価格、より良い売り方を考えることで、漁師が『今ある資源を守りながら活用する』という視点を持てると思う」と村上さん。国内でも特に漁業が盛んな北海道と九州を皮切りに展開し、ワークショップを通して「漁業資源を守っていくこと」に関心を持った漁業者とFIPを進めていく予定だ。

「食べることを通じて、消費者が持続可能な漁業を後押しできる世の中に」との思いで、漁師や料理人と協力して商品を企画したり、漁師が収集したデータを国の政策策定に生かせるように提供するなど、生産と消費、政策をつなぐ事業にも取り組む。

現場でのボトムアップの取り組みは時間がかかる。取り組みをより多くの地域に広めるため、「今後は大手スーパーやEコマース企業、多くの料理人とつながり、頑張る漁師さんの応援者を増やしていきたい」と、生産現場に対するいちずな思いをにじませた。(克)

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