環境条約シリーズ 367国際海事機関の第78回海洋環境保護委員会
2022年10月17日グローバルネット2022年10月号
前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)
国際海事機関(IMO)の第78回海洋環境保護委員会(MEPC 78)が2022年6月に開かれた(本誌2020年12月)。IMO温室効果ガス排出削減初期戦略(2018年)の改正については、削減目標の引き上げ・強化とともに、開発途上国、特に、小島嶼国・後発途上国の必要への配慮が再確認され、MEPC 80での採択に向けて会期間会合を続けることとされた。
MARPOL(海洋汚染)条約附属書VIは、船舶からの排出物に含まれる硫黄酸化物などの排出規制を定めており、船舶はそれに適合する燃料油を使用しなければならない。燃料油の硫黄含有量の上限は、一般的には0.50 % m/m(質量濃度)であるが、影響を受けやすい重要な海域として指定された排出規制区域(ECA)においては0.10% m/mである。これまでに、バルト海、北海、北米および米国沿岸カリブ海の4区域がECAとして指定されている。MEPC 78において、地中海全域をECAとして追加指定すること、そのため、附属書VIの改正をMEPC 79での採択に向けて準備することが合意された。その改正には、24年中期の発効、25年からの適用が想定されている。
IMOは、持続可能な開発目標(SDGs)の第14目標の達成の一環として、船舶起因の海洋プラごみに関する「行動計画」(MEPC 73)および「戦略」(MEPC 77)を採択している。MEPC 78においては、流失・廃棄・放棄された漁具による海洋プラごみを防止するため、MARPOL条約附属書Vおよび関連指針を改正して、漁具に対する識別表示を義務化することが決定された。また、その義務化までの間、任意の識別表示および「漁具の識別表示のためのFAO任意指針」の実行を促進することも決められた。
以上のほか、北極海地域取り決めのためのMARPOL条約の各附属書の改正案、廃棄物記録帳の義務付け(MARPOL条約附属書Vの改正案)、バラスト水条約の再検討計画の策定と対応部会の設置、バラスト水の生物処理手引き・再評価指針の策定、環境関連条約規定の統一解釈の確定なども承認された。